昭和基地でのごみ処理(2024年8月号)

いろいろなごみの入ったドラム缶を4つ1組に束ねて運びやすくします。灰や炭の他に、つぶしたアルミ缶やスチール缶、破砕したガラスくずなどもドラム缶に詰めます。

 みなさんはご家庭の中で、ごみを捨てることを意識したことがあるでしょうか? 昭和基地でも隊員たちが生活していますので毎日ごみが出てきます。

 各隊員はそれらのごみを決められたごみ箱に分けて捨てています。ごみ箱に集めたごみは当直隊員により、基地内のごみ集積場に集められます。

 「空き缶」は機械でつぶし、「空きビン」は破砕機で細かく砕きます。「ダンボール」や「ペットボトル」、「プラスチック」は圧搾機で体積を小さくします。「生ごみ」は熱をかけて炭にします。さらに炭は「燃えるごみ」とともに焼却炉で燃やして灰にします。つぶす、砕く、燃やすなどして小さくすれば、隊員が帰国するときに乗船する「しらせ」で日本まで持ち帰りやすくなるのです。

 ごみを持ち帰ることによって南極がごみでいっぱいにならないようにしています。ごみ捨ては簡単そうで難しいです。

焼却炉に詰めた圧縮した「燃える(可燃)ゴミ」と「段ボール」。おおよそ100kg程度のゴミを一度に燃すことができます。
焼却炉に残った灰。おおよそ10から15kgの重さになりました。この灰は南極で捨てられません。そのため、「しらせ」に積んで日本に持ち帰ります。
生ごみ処理装置で処理された炭。熱により水分が抜け、焼け焦げることにより元の重さの5分の1から10分の1程度に減ります。
ごみを処理してできた灰・炭などは専用のドラム缶に詰め込まれ、次の帰国まで保管されます。これらのドラム缶は「何が」、「どれくらいの重さで」入っているか記録されます。ドラム缶は屋外に保管するため、南極の強風に飛ばされないように石をのせて重くします。
ダンボールは束にしやすい大きさに切ったり、折ったりしてから重ねて圧縮してヒモで束にします。1束はおおよそ15から20kgとなります。
上の写真のコンテナの扉を閉めると外においても雪が入ってこないので、乾いた状態で保管できます。この状態でしらせに積み込み日本まで持ち帰ります。

(第65次南極地域観測隊 環境保全 髙松秀紀)
掲載協力/国立極地研究所

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