冷暖房器具がなくても-50℃から50℃までは耐えられます
人間は、今のところ気温が-50℃から+50℃の間なら生きていられると知られています。ただし、衣服、食料、水分、塩分が豊富に利用できる環境が必要です。下限は、燃料を豊富に使えるとすると-50℃以下でも大丈夫ですが、質問は「暖房器具や冷房器具を使わずに」という意味でしょうから、現在北極圏に暮らしている環境を参考にしました。
冷房機を使わないとすると、上限には限度があります。恒温動物(環境温が変化しても深部体温を一定に保つことができる動物。爬虫類などの変温動物に対する用語)が体温維持可能な環境温は図1のようになります。深部体温を保てる環境温の範囲は、水生のカモノハシが10℃から30℃と一番狭く、人間は他の陸上の動物と比べても5℃から50℃までと、最も広い環境温の差に耐えられます。これは、人間は汗をかいて体温を下げる機能が発達しているからです。なお、深部体温とはいわゆる「体温」のことで内臓温度のことです。環境温の変化に応じて変わる皮膚温と対照的に考えられています。
ただし、深部体温を維持するためには、環境温が低いときも高いときも大量の身体的エネルギーを消費します(図2)。低いときは多量の食料を原料にしてホルモンによって体温産生を行い、高いときは発汗するためにエネルギーと水分・塩分を必要とします。こうして人間は深部体温を35℃から41℃までの範囲で維持します。この範囲を外れると自己復温ができず死亡します。
(防衛医科大学校名誉教授 西田育弘)
図1
恒温動物が深部体温を一定に保てる環境温。
図2
必要なエネルギーと環境温の関係。
中性温は最も省エネルギーで生活できる環境温。