アリは嗅覚で仲間かどうかを見分けている
童謡「おつかいありさん」にもあるように、アリとアリが触角を使ってお互いに「ちょんちょん」と触れ合う姿を目にすることがあるね。昆虫の触角はいろいろな臭いを感じることができる優れたセンサーで、アリは触角で触ることで仲間か敵かを見分けているんだ。昆虫の体の表面はさまざまな種類のワックス(揮発性の低い油分)で覆われていて、昆虫の種が違うとワックスの種類が異なる。さらに同じ種類のアリでも棲む巣が違うと各ワックス成分の割合が異なっている。アリは他のアリの体に触角で触ることにより、体表ワックスの種類と割合が自分と同じかを判断するんだ。つまり、視覚ではなく嗅覚で同じ巣に棲む仲間を見分けるわけだね。
おもしろいことに、このしくみを利用してアリの巣に棲む昆虫がいる。ゴマシジミというチョウの幼虫やアリヅカコオロギというコオロギの仲間は、特定のアリと似た体表ワックスを持つことで、攻撃されることなくそのアリと一緒に暮らすことができる。見かけはずいぶん違うけど、同じ臭いを持つことで仲間と認識されるようだ。
(農研機構 神村学)
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触角を使ってコミュニケーションを取るクロヤマアリ。