自分の声は、空気伝導だけではなく骨伝導でも感知されるから
自分の声は、空気伝導と骨伝導の両者によって聴覚センサーに感知されます。このため、たとえ耳を塞いでも、骨伝導によって音が感知されるので、自分の声は聞こえます。むしろ、耳を塞ぐと音は大きくなりますよ。
声は、喉にある声帯の振動が音波の素となります。この音波の素が口腔と鼻腔(図1)で共鳴することにより振幅が増幅され、さらに音に変質・増大が加わり、その結果、個人独特の音声となります。この音声は、空気振動として空気中を伝播し、外気の振動として外耳へ入り、鼓膜を振動させ、内耳にある聴覚センサー(蝸牛)へ伝わります(空気伝導)。また、自分の声だけは、外気の振動とは別に、鼻腔や口腔に起こった共鳴振動波が頭蓋骨にも伝わり、この頭蓋骨振動が直接蝸牛(図2)を振動させます(骨伝導)。
声(音波)は、口腔や鼻腔における共鳴音が耳管(図2)を通して直接中耳へ伝わる場合もあります。通常、耳管は閉鎖しているのでこの現象は起こりませんが、もし、耳管が開いたまま(耳管開放症:急激な体重減少や気温差などが原因で起こる)になると、これが起こり、不快感をともないます(自声強聴という)。また、逆に風邪で鼻が詰まってしまった場合は、口鼻腔での共鳴が不充分となり、声の質が変わってしまいます(閉鼻声)。
耳に栓をすると自分の声が大きくなるのは、口鼻腔で起こった振動波が閉鎖された外耳道の空気を共鳴振動させ、この強調された空気伝導音が骨伝導音に加わるためです。
(防衛医科大学校名誉教授 西田育弘)
図1 のどの構造
図2 耳の構造