人間の耳には聞こえない空気の振動を超音波と呼びます
スピーカーや太鼓から音が出ているとき、その表面は振動しています。音は、この振動が空気の振動として伝わったものです。この音の振動が速いほど、高い音として聞こえます。ところが、振動が1秒間に2万回を超えるほどになると、人間の耳では聞こえなくなります。このような音を超音波と呼びます。コウモリなどは超音波を聞くことができる動物として知られています。
超音波の技術は、1912年のタイタニック号の沈没事故をきっかけに大きく進みました。まず、レーダーが使えない海中を調べるために、超音波を使ったソナーが開発されました。ソナーは海中でさまざまな物にぶつかって返ってきた超音波のこだま(反射)を調べる技術で、魚群探知機などに応用されています。この超音波の反射を利用して物を検知する技術は、現在では海中だけでなく、自動扉や車などさまざまなところで使われています。
超音波はお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの成長を調べたり、内臓の状態や、外からは見えない物の中の傷を調べたりする技術にも使われています。これらの技術はエネルギーの低い超音波を使っているので、人間の体に影響はありません。また、凸レンズで光を集めるように、超音波を集めて当てると高いエネルギーになります。このエネルギーを利用して、がん細胞を死滅させたり、体の中にできた結石を破砕したりする治療も行われています。
この他にも、メガネをきれいにする超音波洗浄器や、スマートフォンや携帯電話の中の電子部品などみなさんの身近なところでも、超音波は使われています。
(同志社大学理工学部教授 松川真美)
図 さまざまな装置の超音波の周波数と波長。
周波数(振動数)が高くなるほど、波長は短くなる。