消化酵素が食べ物を分解して血液の中に取り込みます
消化器は、口、咽頭、食道、胃、小腸、大腸の消化管と、すい臓、肝臓、胆のうから構成されています(図)。
水分や塩分などの小分子は分解せずとも血液の中に取り込むしくみがありますが、炭水化物やタンパク質などは大きな分子からできているため、そのままでは取り込むことができません。そこで登場するのが消化酵素です。消化酵素はだ液や胃液などの消化液の中にあり、物質と交じり合うと、その物質を構成している原子と原子の結合を切り離します。小分子化した栄養素なら血中へ取り込むことができます。
口はだ液でデンプンを分解し、胃は胃液によりタンパク質の一部を分解します。腸はすい臓からのすい液により、デンプン類やタンパク質のすべてを分解し、また、胆汁により脂肪類を水溶性にし、すい液で分解します。その後、小腸で分解された分子群は、粘膜内に取り込まれます。吸収された分子群は血流に乗って肝臓へ運ばれて、体に必要な物質に合成され、全身へ送り出されます。小腸で吸収されなかった物質は大腸へ運ばれ、糞便化されます。
(防衛医科大学校教授 西田育弘)
図 食べ物と同様、人間の体もタンパク質や脂肪からできているが、
口腔から大腸まで固い粘液で覆われているため、
消化酵素によって胃や小腸が溶けてしまうことはない。