なぜ人間はこのように進化したのですか?

チンパンジーと共通の祖先から、猿人、ホモ属の人類へと進化してきました

人類に一番近い生き物は、今生きている中では、アフリカにいるチンパンジーです。それとアフリカにいるゴリラ、東南アジアにいるオランウータンとテナガザルを合わせて、「類人猿」と呼びます。
人類は類人猿の仲間ですが、2本足で立って歩くという、とても変わった特徴があります。脳が大きいこと、犬歯という歯が小さいことなども人間の体の特徴です。さらにみなさんもご存じの通り、精密な道具をつくって使うとか、言葉によるコミュニケーションができるとか、芸術や宗教など、高度な文化を持つという点でも他の生物とはずいぶん違っています。
現在の地球上には私たちホモ・サピエンスという1種類の人類しかいませんが、過去にさかのぼればご先祖様のご先祖様、そのまたご先祖様がいたはずです。ではどこまでが人類なのでしょう? 正解は1つではありませんが、人間の進化を研究している私たち人類学者は、人類の起源を「人間に一番近い生き物(チンパンジー)との共通の祖先から枝分かれした時点」と決め、枝分かれしてから今の私たちにつながる道のりの途中にいたものはすべて人類、と考えることにしています。
人類の起源の時期は、最近の研究によると、600~700万年前ごろのようです。その起源からおよそ250万年前ごろまでの進化において、前半の人類は「猿人」と呼ばれます。名前の通り、まだあまり人間らしくない人類だったようですが、直立二足歩行はすでに始めていました。一方、猿人の脳は類人猿と同程度の大きさだったことがわかっています。
なぜ人類が二足歩行をするようになったか、はっきりとはわかっていませんが、アメリカのラブジョイ博士は、人類は進化の途中で現代と同じようにオスとメスのペアで生活するようになり、オスが自分の子に食べ物を持ち帰るのに都合がよかったためではないかと考えています。
脳が大きくなり始めたのはホモ属の人類です。ホモ属の人類は、250万年前ごろに登場しました。私たちホモ・サピエンスと同じく「ホモ」というグループに入っており、猿人よりもずっと私たちに近い人類です。脳が大きくなった理由はやはりはっきりわかってはいませんが、脳が大きくなったことによって石器などの道具がつくられるようになり、それ以降は次第に行動の上でも人間らしくなっていきます。文化こそが最大の人間らしさのように思えますが、実は人類の進化の後半に脳が大きくなって初めて可能となったのですね。
(慶應義塾大学文学部人類学研究室准教授 河野礼子)

 人類の進化の歴史。

最新号好評発売中!

子供の科学 2024年 12月号

CTR IMG