表面張力が働くため
水をはじめ、空気や机、人間の体などのすべての物質(もの)は、分子というとても細かい(顕微鏡でも見ることができない)粒でできていて、粒(分子)同士は互いに引き合っている(この力を分子間力という)。この力のおかげで、液体や固体はまとまっていられる。空気などのガス(気体)は分子が動くエネルギーが大きく、引き合う力(分子間力)を振り切ってしまうので、まとまらずに広がっていく。
水など液体の中にある分子も、上下左右のあらゆる方向の分子と結びつき、引っ張り合っている。分子1個について見ると力はつり合っていて、どちらの方向にも動かない。ところが、水のいちばん外側(水滴の表面)にある分子は、それより外側には分子がないから、内側とだけ引き合っているんだ。外側からは引っ張られていないので、分子1個で見ると内側に引っ張る力が働くことになり、水滴全体で見ると体積が小さくなる向きに力が働いていることになる。体積が小さくなると表面積も縮むので、この作用は表面を縮ませている働きと見ることができる。ゴム風船がゴムの引っ張る力で縮むのとよく似たしくみで、この作用のことを「表面張力」というんだ。
宇宙ステーションの中など重さを感じられない空間(でも重力そのものは作用しているので、正しくは無重量空間という)でも、液体に表面張力は働いている。なので無重量状態で空中に水を飛ばすと、水滴全体の表面積がいちばん小さい形になる。一定の体積で表面積がいちばん小さいのは球形なので、水滴は球になるわけ。
なお、地上では水滴に働く重力は地球の中心(真下)に向かうので、球が押しつぶされた形(鏡餅のような形)になるんだ。
(山村紳一郎)
図 表面張力のしくみ。