左右の耳に違う音を届けるため
人間の耳は、音が聞こえてくる方向がわかります。これは左右2つの耳があるからです。右の方から音が聞こえてくると、右耳で先に聞こえ、わずかに遅れて左耳で聞こえます。また、頭部の表面で音が回折(物体の後ろに回りこむこと)するため、音の強さと位相(波形)が、左右の耳で違って聞こえます。このように左右の耳に入る音のわずかな差から、脳は音のやってくる方向を認識しているのです。
音楽を録音するときは、左右に並べた2本のマイクで録音します(実際は数多くのマイクを使いますが、基本は左右2本です)。そのため、左のマイクと右のマイクに入る音は、楽器の位置によって、微妙に異なるというわけです。
再生するときは、左のマイクで録音した音を左耳で、右のマイクで録音した音を右耳で聴きます。これをステレオ方式といい、横に広がりのある立体的な音響を楽しむことができます。イヤホンの左右を逆に耳にはめると、左右逆の音が聞こえてしまうので、広がりのある音を再現することができません。
(白鳥 敬)
図 左右の耳で聞こえる音にわずかな差がある。
この差を左右のイヤホンで再現することで立体的で臨場感のある音を聞くことができる。