ダークマターは見えないのに重力がある暗黒物質、ダークエネルギーは宇宙の膨張スピードを上げる暗黒のエネルギー
どちらも宇宙のニュースでときどき話題になりますね。ダークマター(暗黒物質)は宇宙の所々に塊で存在し、見えないのに重力を持つ物質です。一方、ダークエネルギーは宇宙全体に均等に分布していて、宇宙が膨張するスピードをどんどん速くする力を持っています。最新の観測では、この2つが何と宇宙全体の95%を占めていることがわかりました。しかし、その正体はどちらもまだ不明です。
目には見えない重力を持つ何かの存在は80年以上も前から知られていました。銀河団の中の銀河たちの動きを観測すると、互いの重力だけでなく、他の重力の影響も受けているように見えたからです。その重力を及ぼしている未知の物質をダークマターと呼ぶようになりました。最近では、ダークマターの重力の影響でその背後にある銀河がゆがんで見える現象「重力レンズ効果」が発見され、その存在が信じられるようになっています。また、この現象を多く見つけることで、ダークマターが宇宙にどのように分布しているのかといった、地図づくりも進められています。
一方、ダークエネルギーの登場は比較的最近の1998年。遠くの超新星(ある星の一生の最後に起きる爆発現象)が、これまでの理論で予想される速度よりも速く遠ざかっていることが発見されました。つまり、宇宙が膨張する速度はどんどん速くなっていることがわかったのです。かつての宇宙論では、宇宙全体の重力でブレーキがかかり、膨張は遅くなっていくと思われていたため、重力に逆らって加速しながら宇宙を押し広げる未知の力は、ダークエネルギーと名づけられました。
さまざまな時代の銀河の遠ざかるスピード(つまり宇宙の膨張のスピード)を観測することで、ダークエネルギーが時間とともに変化するものなのかなど、その性質を探る試みがなされています。
(室井恭子)
写真
重力レンズ効果でゆがんだ銀河(丸く囲まれた部分)。
ダークマターを含む銀河団(中央の光の群れ)がレンズの役割を果たしている。
(?NASA, ESA, and Z. Levay(STScI))