ビッグバンとインフレーションについて詳しく教えてください。

宇宙が誕生してすぐインフレーション(急膨張)があったと考えられています

これまで、 宇宙の始まりは、ビッグバンという熱い火の玉のような状態が一気に膨張して今の宇宙ができたといわれてきました。しかし、最近では、ビッグバンの前にインフレーションという急激な膨張があって、そのエネルギーがビッグバンを引き起こしたと考えられています。
インフレーションやビッグバンで実際には何が起きたのか、詳しいことはまだわかっていません。確実にわかっているのは、宇宙は今でも膨張しているということです。銀河の観測をすると、遠くにある銀河ほど、速いスピードで地球から遠ざかっていることがわかります。ということは、反対に考えると、昔の宇宙は小さく、すべての物質とエネルギーが1か所に集まった、熱い火の玉のような始まりがあったはずです。これがビッグバンの元なのです。
ではどうやってその熱い火の玉の状態ができたのか? それを解決するために登場したのが、インフレーション理論です。それによると、宇宙は誕生してすぐにインフレーション(急膨張)を起こしたとされ、その膨張はほんの一瞬の出来事(1兆分の1の1兆分の1の、そのまた10億分の1秒!)だったとされています。顕微鏡でも見えないほどの小さな宇宙が、ビッグバンのときには直径1cm以上になっていたと考えられています。1cmというと小さく感じるかもしれませんが、例えば、砂粒が銀河系ほどの大きさにまで一瞬にして膨張したといえば、そのすごさがわかるでしょうか。この急激な膨張によるエネルギーが熱となって火の玉ができ、それがビッグバンを引き起こしたと考えられています。
最近では、インフレーション理論の正しさが観測でわかるようになってきています。現在の宇宙には、銀河がたくさんあるところとそうでないところがあるのですが、そのように「濃いところ」と「薄いところ」のムラがあるのは、宇宙の初期にムラがあったからではないかと考えられています。そのムラはインフレーションで大きく引き伸ばされ、現在の宇宙でも見えるはずだといわれてきました。
現在それは、「宇宙背景放射」という電波を観測することで見ることができます。実際には、宇宙全体の温度の違いを調べます。調査の結果、場所によって温度の高いところと低いところのムラが発見されました。今後、そのムラと銀河の分布が一致すれば、さらにインフレーション理論の正しさが証明されます。そのために、現在は宇宙の正確な地図づくりが進められているところです。
(室井恭子)

 宇宙背景放射観測衛星WMAPが調べた背景放射のムラ。
色の違いは温度のわずかな違いを表している。
(©NASA / WMAP Science Team)

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