同じ物質の匂いは、生物によって感じ方が違う
匂いの感覚は嗅覚といって、物質の分子がもたらす刺激を感じる感覚のこと。例えばうんちの匂いなら、うんち分子のある成分が空中に飛び出し、鼻の奥にある粘膜に届く。ここには「嗅覚受容体」というセンサーを持つ嗅細胞があり、匂いの分子をとらえて脳に信号を送る。この信号が脳の中で合成され、「これはうんちの匂いだ!」と脳が判断するしくみだ。
匂いは「分子で周囲の様子を知る」ための方法で、動物だけでなく、植物やバクテリアなどの微生物も利用している。「食べ物がある」とか「敵がいる」といった判断の助けにしているんだ。
食べ物など、自分にとって都合のよい物質からの分子は「いい匂い」と感じられ、腐ったものや毒など都合の悪い分子は「嫌な匂い」とか「臭い」と感じる。だから、同じ物質の匂いでも、その生物によって感じ方は異なるんだ。もし君がうんちに卵を産むハエだとすると、うんちはきっととってもいい匂い(!)に感じられるはずだ。
(山村紳一郎)
図 人には約350種類の嗅覚受容体があり、それぞれが特定の分子に反応する。