音と同じ速さで音と平行に進んだ場合、音は聞こえません
音の正体は音波という波であり、空気を振動させて人の耳まで伝わります。音は耳の中にある鼓膜を振動させて聞こえます。空気中で音が伝わる速度、つまり音速は秒速約340mと非常に速いです。発せられた音と同じ速さ、つまり音速で平行に進んだ場合には、音は聞こえません。音の波の速度と聞く人の移動速度が同じときは、波と人との位置関係はどれだけ時間がたっても変わらないため、音が追いつけないからです。もちろん、音速以下で移動する場合には、音が追いつくため聞こえます。では、音速以上で移動する場合はどうでしょうか?この場合も音は追いつくことができず、やはり音は聞こえません。
実際に人が音速以上で移動するには、どんな方法があるでしょうか? ロケット推進やジェットエンジンを用いた乗り物を思いつくかもしれません。かつて音速の2倍の速度で飛行する超音速旅客機(コンコルド)がありました。コンコルドは、超音速飛行時に機体から発生する衝撃波が地上へ伝わったときにドドンと聞こえるソニックブーム騒音と、超音速飛行時の空気抵抗の増加(造波抵抗)による燃費の悪化という2つの問題などから現在は飛行していません。
現在、次世代の超音速旅客機開発の研究が、大学や研究機関の研究者によって進められています。機体形状を工夫し先端を尖らせたりすることで、発生する衝撃波の圧力の振幅を小さくさせ、ソニックブーム騒音を小さくし、また、超音速複葉翼理論によって、ソニックブームだけでなく造波抵抗も小さくさせる研究が進められています。
今後、次世代の超音速旅客機が開発され、短い時間で世界中を旅行できる時代が訪れるのはそれほど遠い未来ではないかもしれません。
(東北大学流体科学研究所次世代流動実験研究センター特任准教授 大谷清伸)
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超音速複葉翼機MISORA(ミソラ)。
2枚翼により、衝撃波を互いに干渉させて打ち消すことができる。
騒音が大幅に減り、燃費が向上する。(画像提供/東北大学流体科学研究所)