筋収縮でつくった波と粘液で動いている
ナメクジは秒速1~4mmの速さで動いています。手のひらの端から端まで動くには20秒から1分くらいかかる計算です。ナメクジを透明なガラス板の上に置いて、前へ進む様子を下から観察すると、黒っぽい波(足波)が後ろから前へ動いています。足波は、筋肉が収縮した部分で、ナメクジの動く速さの2倍以上の速さで動いています(図)。
ナメクジが前に進むには、足波だけではなく、腹足を覆っているネバネバした粘液がとても大切な役割をしています。ナメクジの口元や腹足にある分泌腺から出る粘液は、湿度や塩分濃度を調節したり、地面での滑りを良くしたり、垂直な面を動くときに接着する手助けをしたりしているのです。この粘液は、粘弾性物質と呼ばれ、特殊な性質によって腹足と地面の間に起こる摩擦を自動的に制御していると考えられています。
ナメクジはカタツムリの巻貝が退化したものです。ナメクジやカタツムリ、サザエ、アワビなど巻貝のある種は腹足類に分類され、腹足類の多くの種が足波を使って這って動いています。
(島根大学 岩本真裕子)
ナメクジの移動のしくみ