まだ詳しく解明されていないが、今後の研究に期待
辛いものを食べると鼻の頭や上唇など顔面に汗をかきます。これは「味覚性発汗」と呼ばれ、体温調節のための「温熱性発汗」や精神的緊張・感情によって手のひらや足底に起こる「精神性発汗」とは別の意義を持つものとして認められています。
この3つの発汗はみな同じエクリン腺という汗の分泌腺から起こるのですが、その目的や意義はまったく異なります。この中で、味覚性発汗についてだけ、実はまだよくわかっていません。
味による刺激ということでは、唾液の分泌や舌の運動などに影響が見られます。これらは食べることに直接関係していると考えられていますが、味覚性発汗については食事機能とは関係が薄いと考えられています。
一方、顔面の神経などに障害が起こると、味覚性発汗が病的に進むことなどから、辛味の中のカプサイシンという物質が顔面神経や舌咽神経を興奮させ、発汗が生じるのだろうと考えられ、何らかの自律神経反射であることは確認されています。つまり、何か意味のある身体の自動的な反応だということです。
味覚性発汗については、手術後の後遺症として外国で発見され、日本人研究者によって詳細に研究されてきたという経緯があります。今後、日本での研究の進展が期待されます。
(防衛医科大学校教授 西田育弘)