ある条件下で葉の水孔から排出された水分
植物の葉に水滴がついているのを見たことがあるでしょうか? イチゴ、トマトなど多くの作物で観察できますが、朝や夜間の時間帯に限られた現象なので、見たことのない人も多いでしょう(写真1)。
これは植物が吸水した水が葉の先端やギザギザの部分にある水孔から排出されたものです。このように植物が特定の場所から水を出す作用のことを溢液現象といいます。水孔からの溢液は、蒸散作用と深い関わりがあります。溢液は、蒸散が減少もしくは止まった状態で起こります。蒸散が低下あるいは停止して、根から吸水した水がそれぞれの組織に充分行き渡っているとき、余剰になった水が水孔から排出されるというわけです。
蒸散によって吸水が促されていない状態でも、根の押し上げ作用(根圧)によって吸水・溢液は行われていますが、その量は蒸散に比べると小さいので、蒸散速度が速い昼間は溢液は見られません。そのため自然条件下では、気温が低下して湿度が100%近くになる、夕方遅くか朝早くにしかこの現象を見ることができないのです。
(千葉大学園芸学部 丸尾 達)
写真1
イチゴの葉についた水分。
早朝もしくは夜間、湿度が100%近くで風のないときに観察できます。