漢字の「夕」からカタカナの「タ」が生まれた
おもしろいことに気がついたね。夕方の「夕」という漢字、カタカナの「タ」、音は全然違うけれど、形は確かにそっくり。一体どんな秘密が隠されているんだろう?
日本列島の歴史を考えてみようか。今ぼくたちが使っている日本語には文字があるけど、日本語のもとになっている言葉には文字がなかったんだ。そこに、中国大陸や朝鮮半島から人々が移住してきた。彼らは漢字という文字を知っていて、漢字を使ってどうにか日本語を書き表そうとした。
このようにして、漢字の一部からつくられたのがカタカナ。「タ」は「多い」という文字の一部を借りて、タの音を表すことにしたんだ。多数決の多だね。ちなみに「多」は「夕」を2つ重ねた形だけれど、その「夕」の字はもともと「月」からつくられたらしい。日が沈み、月が東の山から出てくる時間が夕方だよね。だから、月の半分。それで横棒が1本だけ。
自分で書くときには、だから、同じでいいと思うよ。漢字のタも、カタカナのタも、もとは同じ字なのだから。
え? だったら漢字の「口」とカタカナの「ロ」はどうなの、だって? うーん、知らない。口の中にはベロがあるから? あとは自分で調べてみよう!
(詩人、明治大学教授 管啓次郎)