空気のクッションの上に浮かんでいるから
ホバークラフトは、水上を走ることが多いので船のように見えますが、実は船というより飛行機に近いしくみで動いています。
ホバークラフトの船体の内部には、下向きに空気を送る大きなプロペラが装備されています。また胴体の周囲には、スカートのようなゴム製の覆いがついています(図1)。
プロペラから送られた空気は、スカートの下のすき間をくぐって外に流れていきますが、このすき間は小さいので、スカートの中の空気が圧縮されて圧力が高くなります。この圧縮された空気がクッションのようになって、船体が海面からわずかに浮かびます。このため、海面を滑るように走ることができ、平らでさえあれば地面でも同じように動くことができるのです。
このように、空気がクッションのように作用する現象は、飛行機でも起こっています。飛行機が滑走路数mまで近づくと、主翼と地面の間の空気がクッションのように働いて揚力が少し大きくなります。そのためドスンと落ちることなく滑らかに着陸できます(これを地面効果といいます)。
海面から離れて走るホバークラフトのメリットは、速度が速いこと。かつて日本で運航されていたMV-PP5型(三井造船製造)の最高速度は時速102kmでした。しかし、波が高いと走れない、燃費が悪い、騒音が大きいなどの理由から、現在はあまり使われなくなってきました。以前は、大分空港と大分市などを結んで運航されていましたが、2009年に終了しました。
(白鳥 敬)
図1
下に向かって空気を送り込み、クッションのようにして浮かんでいる。
前進は後方に取り付けたプロペラによって行う。
このプロペラの後ろには風の向きを変える板がついていて、これを動かして方向転換する。