撮像した虹彩を0または1のコードに変換する
ヒトの虹彩は、妊娠7~8か月でつくられ始め、誕生後の2年間で安定するといわれています。虹彩の表面には紋理と呼ばれる個人に特有の多数の皺が形成され、その内側および裏側には色素細胞があり、多量のメラニン色素を含んでいます。さらに虹彩内部には、瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の2つの筋肉があります。このように虹彩は、皺や色素細胞、筋肉によって複雑なパターンでできており、一卵性双生児や同一人物の左右の目でも異なっています。
虹彩認証システムは、撮影部と登録・認証部から構成されます。撮影部では小型のカメラで目を撮影しますが、虹彩模様を鮮明に撮影するために、通常、近赤外線照明を使用します(写真)。
登録・認証部では、画像処理により虹彩部分を抽出し、ドーナツ状の虹彩パターンを得ます。目に入る光量に応じて虹彩パターンは伸び縮みするので、撮影された画像の虹彩サイズはさまざまですが、コンピューターで一定の大きさにそろえます。
虹彩を多くの微小領域に分割し、各微小領域の明暗に応じて0または1の符号に変換していくと、0または1の符号が1000個以上もつながった虹彩コードになります。登録時はこの虹彩コードをデータベースとして保存、認証時には新たに撮影して得られた虹彩コードが登録されたものと一致するかを照合します。
虹彩認証は、指紋や顔などよりケガの可能性が低く、非接触での認証が可能です。虹彩パターンは生涯ほとんど変化しないため、再登録も不要です。セキュリティシステムとして期待される一方で、虹彩の写真などの偽造物を用いた“なりすまし”の問題が残っています。そこで、生きている人から取得した虹彩パターンと写真などの偽造物から取得したパターンを識別できる生体検知機能を有する個人認証システムに注目が集まっています。
(富山県立大学工学部知能デザイン工学科教授 中村清実)
カメラで撮像して得られた虹彩画像の例。虹彩は複雑なパターンで構成されている。