無重力や長期保存に対する工夫が施されている
アメリカやロシアで承認され標準食とされている宇宙食は、約300種類あります。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、宇宙日本食として29品目を独自に認証しています。
宇宙食の特徴の1つは、無重力に対応するためにさまざまな工夫が施されている点でしょう。無重力下では液体や粉末は、床に落ちることなく空間を漂います。目に入ったり、精密機器に付着して悪影響を与えることがないよう、飲料はストローで飲むタイプになっています。そのほか液体類には粘性がつけられます。ラーメンの場合、麺は飛び散らないよう俵状になっており、あんかけ状のスープをからめて食べます。
また、宇宙飛行士は長期間にわたる閉鎖空間での生活をすることになるので、衛生面の配慮や保存性の確保も欠かせません。衛生面では、生きた菌をなるべく持ち込まないことが原則とされ、通常の食品よりも厳しい基準が採用されています。
保存性に関しては、宇宙日本食の場合、6か月の滞在につき、常温で1年半の消費期限があることが条件とされます。かつては缶詰が多かった宇宙食ですが、レトルト食品やフリーズドライなど保存技術の発展によってバラエティの幅が広がりました。
今後、月や火星などでも有人活動を行うようになれば、3~5年以上の長期間にわたって保存可能な宇宙食が必要とされます。輸送できる物資の量は限られるので、さらなる軽量化も課題になるでしょう。
(JAXA 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士健康管理グループ長 佐藤 勝)
酸化を防ぐため、パッケージには水や酸素を通しにくい素材が使われる。
また、燃えにくく有毒ガスも出ない。(提供/JAXA/NASA)
出発前には試食が行われ、それぞれの好みもメニューに反映される。
手前は宇宙飛行士の油井亀美也さん。(提供/JAXA/ NASA/Bill Stafford)