小惑星の衝突で噴き出した溶岩が黒く見える地域をつくった
他の国ではカニやロバなどさまざまな姿にイメージされる黒っぽい模様。黒く見える理由は、溶岩が冷え固まってできた黒い玄武岩でできているからです。白く見えるところは斜長岩という白い岩石でできています。では、どうして溶岩が流れ出たのでしょう。月に火山があったのでしょうか。
それは月の誕生と関係があります。できたばかりの月はどろどろに溶けたマグマの海で覆われていました。それが冷えていくときマグマの中に含まれていた軽くて白い斜長石の結晶は表面に浮かび、白い月の表面をつくりました。その後、月に巨大な小惑星が衝突して大きくへこんだクレーターをつくり、衝突の衝撃で地下から噴き出した溶岩がクレーターを埋めつくして、黒っぽい地域をつくったと考えられています。その証拠に例えば、「嵐の大洋」と呼ばれる一番大きな地域では、巨大衝突によってつくられたと思われる物質が発見されています。ところがつい最近の研究で、嵐の大洋は他のクレーターとは形がちょっと違うので、巨大衝突ではなく、何らかの原因で地下から湧き出した溶岩が低い地形を埋めつくしてできたのではないか、という新しい考えが発表されました。
月にはまだいろいろな謎がありそうですね。 (室井恭子)
図 月の模様の見え方
南ヨーロッパでは、日本のウサギの耳の部分がハサミになったカニとしてイメージされている。