鳴門の渦潮はどうやってできるのですか?

潮の満ち引きと、海峡の地形、強い流れによってできます

渦ができやすいのは、周囲の流れの向きが大きく変わる場所です。鳴門海峡で瀬戸内海から太平洋に海流が流れるとき、図1のように海峡の中央付近で流れが速く、海岸付近では遅くなります。このとき、海峡中央と海岸の間に浮かんでいる人から見ると、中央と海岸では流れの強さの差が大きく、渦ができやすい状況になっています。また、海流は長い距離にわたって流れますから、こうした渦のできやすい部分は最初のうちは帯のようにつながった形になります。しかし、この流れの帯はとても不安定で崩れやすく、そのかたちを保つことができません。そして、「回転する丸いかたち」つまり「渦巻き」へと変形して帯から分離し、卵のように渦潮を産み出していきます。

これが渦潮のできるしくみですが、この現象だけなら、流れのあるいろいろなところで観察できます。実は、鳴門の渦潮はそれ以上に宇宙と地球のつくりだすスケールの大きな現象なのです。鳴門海峡の流れをつくり出すのは地球と月の引力がもたらす海面の上昇です。鳴門海峡の太平洋側で上昇した海面は明石海峡を通って淡路島を一周し、瀬戸内海側に時間遅れでたどりつきます(図2)。このとき、太平洋側では海面はもう低くなっていて、海峡両側の海面の高さの違いができます。このため強い流れが海峡で発生し渦潮が産まれるのです。

渦潮は地球と月、海峡の地形と渦潮をつくる速い海流によって産まれ、最後には流れの摩擦のために消えてしまうのですが、その間、他の渦潮たちと複雑に絡み合って美しいパターンをつくり、私たちを楽しませてくれます。

(京都大学 坂上貴之)

図1
鳴門海峡では海岸と中央で流れの強さの差が異なり、渦ができやすい状態になっている

図2
太平洋側で満潮になった海面が、淡路島を一周して瀬戸内海側の鳴門海峡に達したとき、
鳴門海峡をはさんで播磨灘と紀伊水道の間に水位の差が発生する。

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