放射性元素を時計として使います
放射線を出しながら、徐々に壊れてゆく性質を持つ元素のことを放射性元素といいます。この放射性元素を時計として使うことで、地球がいつごろ誕生したのかを測定することができます。
時計に用いる放射性元素の1つに、ウランがあります。同じ種類の元素でも、原子1個の重さが違うものがあって、これらを同位体といいます。ウランにはウラン235とウラン238という同位体があります。235や238という数字は、水素原子の重さの何倍かを示しています。ウラン235は、約7億年で元の個数のうちの半数が壊れます。一方、ウラン238は、約45億年で元の個数のうちの半数が壊れます(図)。
図 ウラン238の減衰曲線。何十億年といった長い時間を測るには、半減期が長い物質を調べるのがよい。ウラン238は原子の半数が鉛206に変化するのに、約45億年かかることがわかっている。
ウラン235とウラン238は、壊れるとそれぞれ鉛207、鉛206に変化します。多くの岩石や鉱物は、ほんの少しですがウランを含んでいます。岩石や鉱物に含まれているウランと鉛の同位体の濃度を詳しく比較することで、岩石や鉱物が何年前に固まったものなのかがわかります。
宇宙から地球に落下してくる隕石は、地球の材料となった物質を当時のままとどめています。そうした隕石に含まれている鉱物は、最も古いもので、約45億6700万年前に固まったことがわかっています。一方、地球上でマグマが固まってできた鉱物の中で一番古いものは、約44億400万年前に固まったことがわかっています(写真)。ということは、地球はこの間にできたと推定することができます。
写真 オーストラリア西部で採掘された地球最古の鉱物「ジルコン」の結晶。大きさは約0.4 ㎜。結晶中の元素を分析することで、約44億年前に形成されたことが判明した。
(©John Valley, University of Wisconsin – Madison)
他の放射性元素を用いた研究も組み合わせることで、地球ができたのは今から約45億年前と推定されています。
(北海道大学理学部地球惑星科学科教授 倉本 圭)