車間距離が詰まって後続車にブレーキが伝わっていくため
毎年、ゴールデンウィークやお盆、年末年始の時期には高速道路で大きな渋滞が発生しています。普段はあまり混まないのに、なぜこうした時期だけ大渋滞が発生してしまうのでしょうか。長いお休みの期間なので、家族旅行などで車を使って移動する人が多くなるから、という理由は誰でも思いつきますが、ここではもう少し科学的に考えてみましょう。
まず、渋滞でニュースに登場する場所は、毎年ほぼ同じです。例えば、関越道の花園インターチェンジや中国道の宝塚トンネルなど、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。こうした場所に共通している要因は、実は上り坂なのです。上り坂といっても分度器でいえば2°程度で、ゆるやかすぎて運転手は坂であることに気がつきません。そのため、アクセルはそのままで上り坂を運転することで、車のスピードは少しずつ遅くなっていきます。このときにもしも、後ろの車が車間距離を詰めて運転しているとすると、次々と後ろの車にブレーキを踏ませることになります。そうなると十数台後には車は止まってしまうのです。
渋滞はブレーキというバトンを伝え合うゲームのようなものです。このバトンリレーが途中で切れれば渋滞は発生しませんが、ブレーキが後ろまで伝わると渋滞になります。したがって、渋滞を防ぐには車間をあけることが大切で、40m以上あけていればブレーキは後ろに伝わりにくいことがデータからわかっています。
普段は車が多くないので、走行中に40m以下の車間距離になることはありません。しかし車が多くなってくると、だんだんと車間距離が短くなり、スピードも遅くなってきます。そうなると早く行きたいと思ってさらに距離を詰めてしまい、その結果、渋滞になるのです。混んできても車間距離にゆとりをもって走る人が多くなれば、渋滞は減っていきます。
(東京大学先端科学技術研究センター教授 西成活裕)
図 上り坂で先頭車が遅くなると、後続車は危険回避のために強めにブレーキをかける。
もしも車間距離を詰めていると、後続車になればなるほど、ブレーキがより強く伝わっていく。これによって渋滞が発生する。