岩穴や泥の中にもぐりこんで隠れるときに都合がいいため
明るい光が嫌いなウナギは、昼間は暗い岩のすき間や泥の中の穴に身を隠していて、夜になると出てきてエサを探して活動します。ウナギの体が細長いわけは、こうした岩穴や泥の中に潜り込んで隠れるときに都合がいいからです。またウナギは狭いところが大好きで、体が周りの壁にくっついていると落ち着くようです。川岸の土手の曲がりくねった細い穴や川底の大きな石の複雑なすき間に沿って、細長くて柔らかい体を自在にくねらせ、するすると入り込むことができます。これが逆に、ころころと丸っこい体をしていたとしたら、狭いすき間に入っていったり、泥を掘って潜り込んだりするのは容易ではありません。
実際に水底の泥をウナギが掘って棲み着いていた巣穴に、プラスチックを流し込んで型をとったことがあります(写真)。入り口と出口が1つずつあるU字型のトンネルで、長さがおよそ1m、水底の泥の中の深さが30cmあります。トンネルの通路の断面は楕円形で、横幅は数cm、高さは3~4cmとやや横に平べったくなっています。
写真 ウナギの巣穴。(a)横から見た巣穴。 (b)上から見た巣穴。
トンネルの型をとるときに中にいたウナギが一緒に採れました。体長は63 cmで、胴体の高さは3.1 cm、幅は2.4 cmでした。これを見ると、ウナギの巣穴は高さ方向にはあまり余裕はありませんが、横方向には広いことがわかります。つまり、ウナギはその細長い体を水平方向にくねらせてトンネルを掘るので、こんな形の巣穴ができるのです。
ウナギはその細長い体を波状に動かして前進しますが、この波の動きを逆向きに動かすことで、バックすることもできます。細長い体をしているからこそできる芸当です。またウナギは他の一般の流線型の体形をした魚に比べて泳ぐのが下手と考えられがちですが、実際は細長い体を巧みに使って効率の良い泳ぎ方をすることができます。事実、何千kmもの距離を驚くほど少ないエネルギーで泳いで自分たちの産卵場まで到達することができます。
(日本大学 ウナギ学研究室教授 塚本勝巳)