バルバスバウはどうやって波の抵抗を消しているの?

船のつくる波と逆の波をつくってぶつけている

船が他の乗り物と最も違う点は、船だけ水と空気に接していることです。他の乗り物は空気にしか接していません。みなさんが空気中を走ると空気からの力(空気抵抗)を受けますが、船の場合には空気抵抗よりも大きい、水からの抵抗も受けます。さらに、船が進むことによって水面に波ができるため、造波抵抗という余分な抵抗を受けます。こうした抵抗について、船の形で最も大きな影響を持つのは船首と船尾です。船尾は形の悪いところから渦が発生しないように、つまり渦抵抗を減らすように、流線型に近い形になるように設計されます。そして、船首の水面下には船首バルブがついていて、造波抵抗を減らす役割を持っています。船首バルブのついている船首を「バルバスバウ」と呼びます。

水面に波をつくることを想像してみてください。大きな波をつくろうとすると、大きな力が必要になりますね。船も波をつくりながら進んでいますので、起こした波が大きくなればなるほど受ける力、つまり造波抵抗が大きくなります。そのため、造波抵抗を減らすには船が起こす波を小さくしなければなりません。船首バルブは、図1のように船体のつくる波の高いところと船首バルブのつくる波の低いところが合うように設計されており、船のつくる波の高さを減らすことができるので、造波抵抗が小さくなります。このように設計された理論船型のつくる波を船から離れたところで計測すると、実際に主船体のつくる波が船首バルブのつくる波によって小さくなっていることがわかります(図2の実線の波形)。

また、抵抗を減らすためには船の形のほか、水と船体との摩擦を減らして摩擦抵抗を小さくすることが考えられます。そのために、摩擦の低い塗料の開発や船体と水との間に空気膜をつくる方法など、多くの研究が行われています。

(横浜国立大学大学院工学研究院 鈴木和夫)

図1 バルバスバウのつくる波

図2 模型船のつくる波の計測例

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