派手な方がかえって保護色になるからと考えられる
なぜ熱帯魚にはカラフルなものが多いのでしょうか? その確定的な理由はまだよくわかっていないのですが、魚たちの暮らす環境を理解することで、いくつかの可能性が考えられます。
熱帯魚として人気のネオンテトラやグッピーなど、淡水魚にも美しい体色をしているものがいますが、色彩の派手さと種類数で際立つのは、なんといっても熱帯や亜熱帯のサンゴ礁に生息する海水魚たちです。
サンゴ礁は複雑な立体構造や地形を形成しており、魚類や甲殻類、貝類など多種多様な生物たちの棲み場所となっています。強い日差しのもと透明度の高い海中では、色とりどりのサンゴが鮮やかなコントラストを生み出しています。天敵から身を守るため背景に紛れ込んでカムフラージュ(保護色)することは生き延びる上で重要な防衛手段ですが、このような海では、派手な色や模様がかえってカムフラージュになっている可能性があります。
また派手な模様の中でも、縞模様を持つものが多いのは、縞模様が強調されることで体の輪郭が不鮮明になる効果があるからだと考えられ、これは分断色と呼ばれます。天敵が獲物を捕食するときは、普通、頭から呑み込もうとするのですが、眼を横切る縞模様は眼を隠すので敵を欺くことができます。ちなみに体の後方に眼状紋を持つものもよく見られるのですが、尾部を頭に見せかけることで逃避率が高くなることが知られています。
一方、カラフルなのは保護色ではなく、毒や鋭い棘がある、味がまずいなど捕食魚として不適当なことを知らせる警告色(警戒色)である可能性もあります。実際はまずくなくても、外見だけまずい種類に似せて捕食を免れるというわけです。その他、体色が同種や配偶者の認識に役立っているという説もあります。
(東熱帯魚研究所 東 隆司)
トゲチョウチョウウオ
体の後ろに眼状紋、眼には黒い縞模様がある。