人の目や耳の三半規管、手足、脳と似た機能を用いる
人が止まって姿勢を維持したり、歩いたり、走ったり、踊ったりなどさまざまな運動をするように、衛星の姿勢制御の方式にも多くの種類があります。
例えば、姿勢の向きを特に指定しない無制御、ある一定方向に姿勢を維持するために衛星全体を回転させるスピン安定制御、地球の重力を利用して地球の中心方向に姿勢を安定させる重力傾斜安定制御、さまざまな姿勢を自由自在に制御するための3軸制御などがあります。
これらの制御方式に応じて利用される機器やしくみはさまざまですが、いずれにしても、人の目や耳の三半規管にあたる姿勢を確認する機能(姿勢決定)、人の手足のように姿勢を維持したり別の姿勢に変更する機能(姿勢制御)、その総合的な動きを制御する脳にあたる機能(姿勢決定制御)を働かせるということが重要です。
姿勢決定用のセンサーには、姿勢角を計測するためのセンサーや姿勢角速度を計測するためのセンサーがあります。前者には「太陽角度センサー」、「地球センサー」、「スタートラッカー」などがあり、後者には「MEMSジャイロ」、「光ファイバージャイロ」などがあります。
姿勢制御を行うアクチュエーターにも、「スラスター」、「磁気トルカ」、「リアクションホイール」、「コントロールモーメントジャイロ」、「伸展ブーム」などさまざまなものがあります。
姿勢決定制御機器は「慣性基準装置」とも呼ばれ、さまざまな姿勢制御方法を駆使して姿勢全体の制御を行います。宇宙空間での姿勢制御を確実に行うためには、上記のような複雑なシステムを統合して正確に機能させる必要があります。宇宙空間での人工衛星の運動を模擬する地上シミュレーターをつくり、どんな状態でもうまく機能するか総合的な検証が欠かせません。
(東京工業大学工学院教授 松永三郎)
「コントロールモーメントジャイロ(CMG)」を搭載した超小型人工衛星「TSUBAME」の内部。
CMGは国際宇宙ステーションなどの大型の宇宙機を制御するのに従来使われてきたが、
小型化の研究が進められている。(東京工業大学・松永研究室)