石灰岩が雨水に浸食されて穴に空洞が広がってできる
海中のサンゴや貝など石灰質の骨核や殻などを持った生物が堆積してできた岩石を石灰岩といいます。やがてこれらが地殻変動で陸上に現れると、雨水によって浸食されます。
この雨水には空気中の二酸化炭素が含まれており、弱酸性を示します。ちょうど炭酸水やソーダ水と似ています。ゆっくりと浸食が進み、やがて石灰岩の中に空洞ができます。空洞同士が繋がったり、空洞の天井が崩れて穴があいたりし、そこにさらに大量の雨が入り込むと横方向や下方向に向かって、どんどん空洞が広がっていきます(図)。こうして数万年以上もの時間をかけて鍾乳洞が出来上がります。日本国内では現在までに、長さが1000m以上の洞窟が70以上も発見されています。
図 鍾乳洞のでき方
石灰岩のすき間に弱酸性の雨水が入り込んで、すき間をつくる。
すき間同士が繋がったり、崩れたりしながら次第に広がっていく。
さらに大量の雨水が入り込み、長い時間をかけて鍾乳洞が出来上がる。
ところで、広がった空間に石灰岩を溶かし込んだ雨水がしみ出てくると、二酸化炭素が抜けて再び石灰質の岩石をつくります。この石灰岩がどんどん大きくなると、鍾乳石になります。鍾乳洞ではいろいろな種類の鍾乳石が成長しています。これらの鍾乳石は、いったいどれくらいの速度で成長しているのでしょう?
それを調べるには鍾乳石の上部と下部の年代を測定し、その年代差を鍾乳石の長さで割れば求められます。この年代測定には天然に存在する放射性元素が用いられます。これらの元素を精密に測定することで、例えば「つらら石」は1000年で数cmから数十cmしか成長しないことがわかっています。したがって、数mあるものは数万年から数十万年もかかって成長してきたことになります。
(琉球大学理学部海洋自然科学科教授 棚原 朗)