斜めに取り付けられた水中翼が揚力を生み出す
航空機は主翼や尾翼という翼を持ち、翼に働く揚力という上向きの力を利用して空気中を飛んでいます。ジェットフォイルは水中翼船の1つで、船体の下に図1のような水中翼を持っています。スピードが遅いときは普通の船と同じく浮力で浮いていますが、高速で進みだすと水中翼が航空機の翼と同じように揚力を生み出し、船体の主要部分(主船体)を空中に浮き上がらせて進みます。つまり、周りの流れが空気という気体なのか、水という液体なのかという違いはありますが、揚力が生じるしくみは航空機の翼も水中翼も同じなのです。
翼は流れの方向に対して、少しだけ斜めに取り付けられています。そのため、翼の上下に水の流れ方の違いがでてきます。
流れの違いは、翼の上面に低い圧力を、下面に高い圧力を生みます。図2は、翼の周りの流れの様子と圧力を、コンピューター計算したものです。流れの様子を曲線で、圧力の大きさを濃淡で示してあります。圧力の高いところが濃く、圧力の低いところが薄くなっています。下面の方の圧力が高く、上向きに力が働くことがわかります。これが揚力で、ジェットフォイルはこの力を利用して、主船体を空中に浮き上がらせて進んでいます。
みなさんもプールなどで経験していると思いますが、水の中よりも地上の方が速く動くことができますね。これは抗力(抵抗)という水や空気から受ける力が、水中の方がはるかに大きいからです。
ジェットフォイルは主船体を空中に出して抗力を少なくし、普通の船よりも高速で進むことができます。また、空中に主船体を出すことで、波の影響を受けにくくなるという利点もあります。
(横浜国立大学大学院工学研究院教授 鈴木和夫)
ジェットフォイル「友」。(提供/東海汽船株式会社)
図1 船体の下の水中に取り付けられている水中翼。
図2 真横から見た、翼の周りの流れと圧力。
(提供:横浜国立大学大学院工学研究院 日野孝則教授)