免疫機能を持つ動物は、花粉症になることがあります
花粉症とは、植物の花粉が原因物質(アレルゲンと呼びます)となるアレルギー性疾患です。アレルギーとは、通常は害のない物質に対して生体が引き起こす、過剰な免疫反応の1つ。動物園のニホンザルが花粉症になって、クシャミや鼻水が止まらないといったニュースを見たことがあるかもしれません。
ヒトやサルと違って、イヌの花粉症は皮膚に症状が出ることが多いです。ある検査会社の調査では、アレルギー性疾患の犬のうち呼吸器症状が出ていたのは10分の1程度です(調査した2338頭のうち「くしゃみ」が238頭で10.2 %、「咳」が84頭で3.6 %)。すべての例で皮膚症状も出ていたという結果も出ています。どうやらイヌの鼻には、さまざまな物質に対して過剰に反応しない働きが備わっているようです。ネコの花粉症は皮膚に症状が出ることもありますが、咳や鼻水など呼吸器の症状が出ることも多く、ネコの喘息として知られています。このように現れる症状は違いますが、さまざまな動物で花粉症が発症します。
皮膚が反応するイヌやネコの花粉症を、獣医師は「アトピー性皮膚炎」と表現します。環境にあるさまざまな物がアレルゲンとなるアレルギー性皮膚疾患のことです。アトピー性皮膚炎のイヌは花粉に限らず、家のホコリやダニの死骸、糞、カビなどにも反応してしまっているケースがほとんどです。その中には食事中のアレルゲンも含まれますが、食事だけが原因でアレルギー症状を示している割合は10%以下と意外と少ないことが報告されています。花粉の飛散時期には、環境中に常にアレルゲンが存在しているような状態です。ペットを飼っている人は、動物の被毛に付着したアレルゲンをできる限り取り除くように努めることが大切です。散歩後に乾いた布で被毛を拭くだけでも効果があります。
ちなみに動物が花粉など、どのアレルゲンに反応しているかは、動物病院での血液検査(IgE検査)で対象を絞り込むことができます。
(獣医学博士 荒井延明)
花粉などに反応するアトピー性皮膚炎のイヌでは、
腹部などに紅斑と痒みが起こる。