汚れを落として、歩きやすくしたり味を感じやすくしている
ハエが前脚を素早くこすり合わせるのを見たことがある人は多いと思う。こすり合わせるのは前脚だけではないぞ。「やれうつな 蝿が手をすり 足をする」という小林一茶の俳句にあるように、じっくり見ていると、前脚以外の脚をこすり合わせてみたり、脚で翅や頭などをこすってみたりと、6本の脚を使って体中をスリスリする。また、このような脚をこする行動は普通の大きさのハエ類(イエバエ、キンバエの仲間など)だけでなく、熟した果物などにやってくる小さなショウジョウバエや、さらにはハエの親戚のアブ類などでも見ることができる。
では、ハエはいったい何のために脚をこするのだろうか? 何かをお願いしたり、遊んだりしているわけではないぞ。ハエは、脚をこすり合わせることにより、脚に付いた汚れを取り除いているんだ。ハエは体にゴミがつくのを感じるとそのゴミをまず脚で拭き取る。さらに、脚をこすり合わせてゴミを落とす。このようにして、身づくろいしている。
また、ハエはつるつるした天井でも壁でもどこへでも止まることができるね。これは、ハエの脚の先に非常に細かい毛がびっしり生えていて吸盤のような役割を果たしているからなんだ。さらにハエの脚先は味を感じることができる、人の舌の役割も果たしている。このように、ハエの脚先は繊細な役割をいろいろと果たしているので、特に入念に手入れをして汚れがつかないようにしなくてはならない。脚をこすって汚れを落とすことにより、どこでもしっかりと歩けて、また、いろいろな味を感じることができるんだね。
(農業生物資源研究所 神村 学)
前脚をこするハエの一種。
こちらは顔をこするホソヒラタアブ。