なぜスキージャンプは遠くまで飛べるの?

空気力、回転力、揚力などの力をうまく働かせているから

運動場を走れば、髪の毛がさらさらとなびきます。空気から力(空気力)を受けているからです。高速道路を走る車から手を出せば(良い子のみなさんは真似しないように)、もっと強い空気力を受けます。ジャンパーも高速道路上の車と同じくらいのスピードで飛んでいます。遠くまで飛ぶコツは、この空気力とうまく付き合うことです。

踏切では、高速で勢いよく飛び出すことが大切です。このためには、小さく縮こまった姿勢で、ジャンプ台を滑り降ります。これによって抗力(進行方向の反対向きに働く空気力 図1)を小さくできるからです。ただし、単に縮こまった姿勢では、勢いよく踏み切れません。スムースに踏み切れる姿勢を維持しつつ、縮こまりながら滑り降ります。踏み切った後には、高速のまま空中を前進し、飛距離を稼ぎたい。そのためには、抗力を小さくします。抗力を小さくするためには、進行方向に頭から突っ込んでいきます。このためには、適切な前回りの回転が大切です。ただし、前回りの回転が強すぎると宙返りしてしまい、危険です。一方、前回りの回転が足らなければ上体が起き上がった状態になり、大きな抗力を受けてしまいます。

遠くまで飛ぶためには、できるだけ地面につかないことです。飛行の後半では、落下しないように空気に持ち上げてもらうことが大切です。この空気力を揚力(図1)といい、大きな揚力を得るためにはスキー板をV字に開き、スキー板と体で風を受け止めます。

ジャンプの最後は、テレマークと呼ばれる着地姿勢をとります。遠くに飛ぶだけならば、V字姿勢を最後の最後までキープしたほうが良いのですが、着地の姿勢を評価する飛型点を稼ぐためにテレマーク姿勢で、着地します。

図1 スキージャンプの力のかかり方

図2 風洞試験の写真。ジャンパーに働く空気力を測定している。

瀬尾和哉(山形大学)

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