養分を枝や幹の皮に移してから葉を落とすから
秋から冬にかけて一斉に葉を落とす木があります。こういう木を落葉樹といいます。これは、気温の低い厳しい冬の時期を耐えしのぐために木が獲得した優れた性質です。
実は、木が冬に葉をつけたままだと、以下のようにいくつか困ったことが起こります。
①乾燥した北風が強く吹くので、葉を通じて木の中の水分がうばわれてしまう(寒風害)
②葉に霜が降りるとその部分が凍って枯れてしまう(霜害)③葉に雪が降り積もると、その重みで枝や幹が折れてしまう(雪害)
これらのことを防ぐには、冬の前に葉を落として休む(休眠)、という方法が有効なのです。しかし、葉の中にも大切な養分が含まれています。そこで落葉樹は、葉の養分を枝や幹の皮(樹皮)の中に移してから葉を落とすのです。
秋に紅葉(黄葉)するのは、葉の中の葉緑素が、樹皮に移動するために分解されることも一因です。春が近づくと、木は樹皮に貯めた養分を使って新しい葉を広げます。落葉した木をよく見てみましょう。枝の先や途中の芽が、春が近づくにつれて膨らんでいく様子が観察できるはずです。
山崎 旬(玉川大学)