磁石のS極が下を向く
南極でも方位磁石を使って移動しますが、南極の昭和基地では、磁石の向きが地図の南北と49度もずれています。だから、磁石のS極の向きに進んでも南極点には行きません。そのため、地図の上に、磁石のN極とS極の向きを示す線を書いて、迷わないようにしています。
ではどこに向かうのかというと、南極大陸からやや離れた海の上に行きます。ここは磁南極(磁石の南極)といって、方位を知る磁石が使えなくなります(一定の方角を向きません)。実は、磁石のS極は下を向くのです。私たちは上下の向きに使える磁石で、磁石のS極が真下を向くことを確かめました(写真)。
また、日本で使っている磁石をいくつか南極へ持って行ったら、使えないものがありました。日本では磁石が水平を向いて回っていたのに、南極ではS極側が下がってしまいました。製品によって水平にする方法が違うので、特に北半球と南半球の間の移動では気を付けなければなりません。
日本でもN極が真北を向いていないことを知っていますか。東京では約7度だけ西にずれています。沖縄では約4度、北海道では最大10度も西にずれています。日時計の向きなどを磁石で合わせるときは、気をつけましょう。
オーロラを知っていますか。オーロラは地球の磁石の北極と南極のまわりに見られます。太陽からやってきた電気を持った流れが、地球という大きな磁石につかまって、北極と南極のまわりに、空気が発光するオーロラを発生させます。昭和基地はちょうどオーロラがよく出る場所にあります。
N極とS極の向く方向は、ずっと昔に反対だったこともあります。古い地層から何度も向きが変わったことがわかっています。今は磁石のN極がだいたい北を向いていますが、しばらくして変わっていく可能性があります。磁南極も毎年少しずつ移動しています。
磁南極では磁石のS極の向きが真下を向く(南極観測船「しらせ」上で撮影)。
武田康男(気象予報士)