月明かりと勘違いして灯りに対して一定の角度で飛ぼうとしているため
夏の夜、コンビニや自動販売機の灯りにたくさんの虫が集まっているのをだれでも見たことがあると思う。光に集まってきたということは、こういう虫たちは明るいところが好きなのかな? でもよく見ると、飛んできているのは、ガなどの暗くなってから活動する虫がほとんどだよね。どういうことなのだろう?
実は、夜に光に集まってくる虫の多くは、明るいところが好きで集まっているというわけではないんだ。人間のつくった人工の灯りを除いて、夜一番明るいものは?
そう、月だね。夜活動する虫たちは、月を見ながら、月明かりに対して一定角度で飛ぶことで高さや方向を一定に保つしくみを持っているようなんだ。月は地球からものすごく遠くにあるために、自分がいくら動いても月のある方角は変わらず、自分の向いている方向を知るいい目印になる(昼間の太陽の方角と同じだね)。そういうしくみを持った虫たちが人工の灯りを見て、その光の向きに対して一定の角度で飛ぼうとすると、どうなるだろう。月と違って人工の灯りはごく近くにあるから、一定角度を保って飛ぼうとすると結果として、灯りの周りをグルグルとまわりながら近づいてしまうんだ。つまり、虫たちは、人間がつくった灯りを月と勘違いして方向の目印に使ってしまったために、知らず知らずのうちに灯りに集まってしまったわけだね。
昆虫が人工の灯りに集まるしくみ。
神村学 (農業生物資源研究所)