たくさんの小さなアリが長い行列になって歩いているところを、だれでも見たことがあるよね。
アリがこのように行列になって巣に帰るときには、匂い(道しるべフェロモンと呼ばれているよ)を目印にしていることがよく知られている。
まず、1匹のアリが食べ物を見つけて目印になる匂いを地面に付けながら巣に帰ってくる。これだけだと匂いはごく薄いのだけれど、もう1匹のアリがその匂いをたどってエサまでたどり着き、さらに新たに匂いをつけながら巣に帰る。こういうことを繰り返すことにより、道しるべの匂いがどんどん強くなり、さらにたくさんのアリがその道を行ったり来たりするようになって、行列ができるんだ。
ただし、アリは目が見えないわけではないよ。アリの顔をよく見ると、ちゃんと目を持っていることがわかる。この目は複眼といって、とても小さな目が集まってできているんだ。昆虫の複眼では、われわれ人間の目ほど周りのものがくっきりと見えている訳ではないけれど、ものの大ざっぱな形はわかるらしい。そして、周りの景色などを目印にして巣に帰ることができるアリもいる。また、昆虫は人間には見えない偏光という光を見ることができる。この能力のおかげで太陽のある方角がわかるので、それも巣に帰るときに役に立っている。さらに、巣から何歩歩いたかを覚えていて、巣までのだいたいの距離がわかるアリもいる。このように、アリは、匂い以外にも様々な情報を使って巣に帰ることができるんだ。
神村学 (農業生物資源研究所)