水中に溶けた空気が抜けだすため
湯船につく空気の粒は、もともと水道の水に溶けていたものです。水道水にはたくさんの空気が溶けています。
水には、その表面からでも空気が少しずつ溶けこみますが、たんに空気と触れているだけではあまり多くは溶けません。しかし、水と空気が激しく混ざることで、溶ける量はより多くなります。さらに、空気のような気体は、まわりの圧力が高いほど、また、温度が低いほど水に溶けやすくなります。
水道の水は、河川などから採水されて蛇口に届くまでに、何度もかき混ぜられ、空気と混ざり合います。水道管で送られるときに圧力がかかりますし、ほとんどの季節で気温より低い温度ですから、空気が溶けやすい状態になっているのです。また、湯船に汲むときにも空気とよく混ざるので、汲んだすぐ後の水には、普通の状態よりもたくさんの空気が溶けています。さらに、汲むときにできるたくさんの泡のうち、目では見えないような小さな泡は、簡単にはこわれずにしばらくの間、水の中を漂っています。
これら、水に溶けていた空気や、漂っている小さな泡が集まったのが、湯船につく空気の粒です。最初に空気が泡になって抜け出てしまうと、それ以上は溶けたままで泡にはなりません。湯船につく泡が「最初だけ」なのは、このためです。
山村 紳一郎 (サイエンスライター)