上下逆さまにうつる凹面鏡になっているから
スプーンの内側は、まん中がへこんでいて光を反射する。このように面がへこんでいる鏡を「凹面鏡」というが、虫めがねのような「凸レンズ」と同じように、光を集めて像をつくるはたらきがあるんだ。
凸レンズの場合は図アのように、ものから来た光がレンズで屈折して1点に集まり、上下逆さまの像をつくる。レンズと目のあいだがじゅうぶんに離れていれば、この像を見ることができる。凹面鏡では図イのように、ものから来た光は鏡の面で反射して1点にあつまり、同じように像をつくる。つまり、スプーンの内側は焦点距離の短いレンズと同じようにはたらいて、目の前に自分の顔を、小さな上下逆さまの像として映し出しているというわけ。ちなみに、もっとずっと平らに近い凹面鏡だと、ずっと離れたところに大きな像ができる。これを拡大して観察するのが、反射式望遠鏡だ。同じしくみでレンズで像をつくるのが、ふつうの屈折式望遠鏡というわけ(図ウ)。
山村 紳一郎 (サイエンスライター)