熱で繊維の分子が元に戻るため
布地の1か所が急な角度で折れ曲がり、元に戻らなくなった状態がしわです。折れるときに引っぱられるので、しわの部分では布が引き延ばされて薄くなっています。
布は細長い繊維でできていますが、繊維もまた細長い分子がからまり合ってできています。繊維や繊維の分子は、もともとゆるやかに縮れています。でも、しわのそばでは引き延ばされますし、しわの部分で大きく折れ曲がります。
ここに熱が加わると、熱エネルギーで分子の振動が激しくなります。分子はより自由な配置…つまり、元の“ゆるやかに縮れた形”に戻るので、繊維ももとに戻って折れ曲がりがなくなります。これで、しわがとれるというわけです。なお、大部分の繊維は水分があると膨らんで、元に戻る力が大きくなります。スチームアイロンは熱と水蒸気の両方が働くので、しわを伸ばす効果が高いのです。
図では繊維が振動するように描いていますが、
実際に振動しているのは目に見えない分子です。
実際に振動しているのは目に見えない分子です。
山村 紳一郎 (サイエンスライター)