子供の科学100周年パートナーのMMOLホールディングス株式会社は、実験やものづくり、自然観察など、好きなことをトコトンやりたい小中学生を応援する“次世代教育プログラム”「小中学生トコトンチャレンジ2024」をサポートしています。
全177件の申請の中からMMOL(ミリモル)賞に選ばれたのは、馬場真心子さん(小学5年生)のアイデア「戦国武将と会話できるアプリ」。いつ、どんなできごとがあったのか、そのときの想いや夢を戦国武将たちに質問できるというアプリの開発です。戦国武将が好きで本やインターネットで調べていくうちに、実際に戦国武将と話してみたいという気持ちが膨らんだ馬場さんは、自分で使うことはもちろん、同じような気持ちの子をワクワクさせるようなアプリをつくりたいと思うようになったそうです。
8/18(日)戦国武将と会話できるAIの体験会を開催!
生成AIを開発するMMOLは、馬場さんのアイデア実現に向けて、生成AIで武将と会話するしくみづくりをサポート。馬場さんが用意した武将の性格や特徴などの情報をもとに、馬場さんとMMOLで共同開発した「戦国武将会話AI」のサンプルを作成しました。
夏休みの8/18(日)、東京・渋谷のMMOL社でその体験会を開催。この日は、MMOL社の河野貴伸社長による「生成AIでなにができる講座」も開催され、講座参加者の子供たちも一緒に、戦国武将会話AIを体験しました。
まずはじめに考案者の馬場さんより、「戦国武将と会話できるアプリ」のアイデアについて紹介。
戦国武将と会話してみた!
さっそく戦国武将とどのように会話できるのか、参加者のみなさんから質問してもらって、戦国武将のAIがどのように答えてくれるか体験しました。
今回、AIとなった武将は、武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、真田幸村、伊達政宗、加藤清正の8人。では実際のやりとりを見てみましょう。
【徳川家康への質問】なぜ豊臣家を滅亡させたいと思ったのですか?
質問を入力するだけですぐに答えてくれます。徳川家康AIの答えは以下の通り。
【織田信長への質問】最も恐れていた人は誰ですか?
【加藤清正への質問】朝鮮出兵での籠城を経験して、城に食べ物を蓄えておくようになったと聞きました。実際にどれぐらいの食糧を蓄えていたのですか?
というように、どんな質問にもとてもリアルに、詳しく答えてくれて、とてもおもしろいです! 他にもたくさんの質問が出て盛り上がりましたが、ここで紹介するのはこのぐらいにしておきましょう。
戦国武将会話AIはどうやってつくった?
気になる、戦国武将会話AIのつくり方について、河野社長が教えてくれました。
織田信長AIをつくるとき、まず前提条件というものを設定します。
AIにやってほしいことの条件、目標、行動方針を指示していきます。このAIへの指示のことを「プロンプト」といいます。
戦国武将会話AIは「Chat-GPT」という生成AIでつくっていますが、生成AIの中には、過去の歴史などの膨大な情報がすでに入っています。そのため、条件を設定してあげれば、それらの情報をもとにまるで会話しているような答えをつくって、出力してくれるのです。
今回、馬場さんと一緒に取り組んだのは、どんな織田信長と会話したいか、という細かい設定の部分です。どんな口調か、どんな性格か、どんな戦いを大事に思っているのか、という細かいイメージを馬場さんに考えてもらい、チョイスした8人の武将について、たくさんのデータをまとめてもらいました。このデータを生成AIに学習させればさせるほど、馬場さんが会話したい織田信長に近づいていきます。逆に、何も学習させなければ、一般的なイメージの織田信長になります。
もうひとつ、生成AIを活用する上で大事なことが、「やってほしくないこと」を教えることです。例えば、いろいろな説があって明確ではないようなことを事実のように発言するのを避けるようにしたり、暴力的な発言や不適切な発言をしないように注意したり、ということです。
最後に、実際の会話のロールプレイ例を伝えて、どんなふうに会話してほしいかを具体的に教えると、AIが会話しやすくなります。今回は馬場さんが細かく設定を用意してくれたので、武将の会話をかなりつくり込むことができました。
また、馬場さんには、各武将の手描きイラストも用意してもらいました。生成AIで武将の画像もつくり出して表示させることができます。
最後に、実際にできたAIと会話をしてみます。そうすると、たまに嘘をいってしまったり、変なことをいってしまうことがあります。これをAIの言葉で「ハルシネーション」というのですが、ハルシネーションがなるべく少なくなるように調整をして、子供たちに体験してもらえる戦国武将会話AIに仕上げていきました。
このAIはスマートフォンアプリにも実装できますので、これを使って馬場さんがどんなものをつくってくれるのか、楽しみにしています。
子供の科学2024年11月号(10月10日発売)では、同時開催された「生成AIでなにができる講座」の内容についても詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
文