『子供の科学』創刊100周年メッセージ★駒木明義さん「雑誌を毎号手にとることで、確実に視野が広がっていく 」

1924(大正13)年の創刊から100年間、科学への好奇心あふれる子供たちを応援し続けてきた雑誌『子供の科学』。誌面に載っている最先端の科学の話や、驚きの実験、おもしろい仕掛けの工作などにワクワクして育った読者から、ノーベル賞受賞者をはじめとした大発見をする研究者、画期的な発明をする開発者たちが生まれました。 そんな『子供の科学』を読んで育った読者からメッセージをいただいています。

駒木明義(こまき・あきよし)。1966年生まれ。東京都出身。朝日新聞論説委員・元モスクワ支局長(写真は、モスクワ中心部の赤の広場にて)。

──『子供の科学』はいつごろ読まれていましたか? また、出会いの経緯を教えてください。

 小学3年生ごろから中学生ごろまでだったと記憶しています。父親が買ってきてくれました。理科系の大学教授だった父が、子供を理科系に誘導しようとしたのだと思います。

 2歳年上の兄と愛読していました。6歳下の妹はまだ小さかったこともあり、あまり読んでいなかったようですが、父の思惑通り、兄、妹、私の3人とも東京大学の理系に進みました。

 私は大学卒業時、進路に迷った末に新聞記者になりましたが、兄と妹は博士号を取得し、研究職に進みました。

──『子供の科学』のどんな特集に興味があったか、思い出に残っている記事などがあれば教えてください。

 ミツバチの働き蜂がダンスを言語のように使い、蜜がある方向と距離を仲間たちに伝えている、という記事が特に印象に残っています。

 中学1年のとき、英語の教材に同じテーマが出てきました。ところが、英語の先生が説明してくれたダンスの意味が、『子供の科学』で読んだ内容とは異なっていたのです。そこで私は『子供の科学』をもって、意気揚々と先生の誤りを正しに行きました。教員室で先生に記事を示しながら「先生の解釈は違うと思う」といったところ、先生はひどく気分を害されたようで、その後私への当たりが大変にきつくなったことが思い出に残っています。たぶん先生に対して、大変失礼ないい方をしてしまったのだと思います。英語は今も不得意です。

1978年5月号『子供の科学』より「ミツバチはなぜ巣へ…?」。『子供の科学』誌面には親しみやすいマンガも多く掲載されてきた。

 このほか、電子工作の記事を読んでパーツを買い集めてラジオをつくったり、付録の紙飛行機をつくったりといった工作も印象に残っています。

 1975年の子供の科学別冊『トントン 紙相撲』も手に入れました。土俵づくり、国技館づくり、力士育成に、兄と2人で熱中しました。

──子供時代に育んだ科学への興味は現在のお仕事や活動、考え方等につながっていますか? どんなつながりや影響があるか教えてください。

 新聞記事を書くときに一番やってはいけないことは、取材した事実を都合よくつまみ食いして(いい換えれば、都合の悪い事実を無視して)自分が思い描くストーリーに合わせて使うことです。意図的にやってはいけないのはもちろんですが、無意識にこうした過ちを犯してしまうことも多くあります。例を挙げると「成績のよい子はちゃんと朝ご飯を食べていることが多い。だから、成績向上のために朝ご飯を食べましょう」といったたぐいの記事で、この場合は相関関係と因果関係を混同してしまったために、前段の事実が後段の主張の論拠として成立していません。

 もうひとつ。世論調査の内閣支持率を見て「自分のまわりは誰も支持していないのに、この数字はおかしい」という人がいます。これは、バイキングで肉好きの人が集まったテーブルに並んだ料理を見て「ここのバイキングには野菜料理が全然ない」と言うのと同じ過ちです。

 こうした過ちを避けるために、科学的な物の考え方が何よりも大切です。新聞記者になった今、一番気をつけていることは、自分が誤った記事を書かないというだけでなく、読者の誤解を招きかねない表現をできるだけ避けるということです。このために、子供のときから親しんだ科学の素養がとても役に立っていると感じます。

──『子供の科学』100周年に寄せてコメントをお願いします。

 創刊100周年、おめでとうございます。これからも子供たちの知的好奇心、科学的知識、科学的思考の向上に役立つ記事を届けてください。偽情報や陰謀論に惑わされない、まっとうな世の中をつくるために、何よりも重要な取り組みだと思います。

──今の『子供の科学』の読者たちにメッセージをお願いします。

 隅から隅まで読む必要はありません。まずは気になった記事、目にとまった記事を読む。さらに、自分が関心を持っていなかったテーマの記事も読んでみる。雑誌を毎号手にとることで、確実に視野が広がっていきます。手にしている人が好みそうな記事や動画を次々に出してくるスマホだけでは得られない、貴重な体験です。

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