実験やものづくり、自然観察など、好きなことをトコトンやりたい小中学生を応援する子供の科学100周年企画「小中学生トコトンチャレンジ2024」。17名の採択者が、年末の研究発表会に向けて研究を進めています。
今回は採択者の1人、「クールな白杖を使って目の不自由な方の役に立ちたい!」の研究開発テーマを進める佐藤大悟さん(小3)の活動を紹介しましょう。
日本科学未来館で「AIスーツケース」を体験
7月4日、日本科学未来館を訪問した佐藤大悟さんは、施設で実証実験として使われている視覚障害者向け自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」を実際に体験しました。目の不自由な方に便利に使ってもらうために、どんな工夫やアイデアがあるのか、研究者に話が聞ける貴重なチャンス! 研究の最前線のことを知って、同じ分野で研究を進める佐藤さんは大きな刺激を受けたようです。
日本科学未来館の高木啓伸副館長にインタビュー!
佐藤さん
なんでスーツケース型にしたのですか?
高木副館長
一緒に研究している全盲の研究者で、日本科学未来館の館長も務める浅川智恵子さんのアイデアなんだよ。スーツケースの後ろを歩いていると、壁があっても先にスーツケースがぶつかるし、段差などがあっても先にスーツケースが落ちてくれて、白杖のように安心して歩けたんだって。だったらスーツケースに装置を搭載して、スーツケース自身が判断して目的地まで連れて行ってくれたら、目の不自由な人にとってすごく便利になると思ったのが最初なんだ。
それに、例えば空港でスーツケースを持っていても、周りもみんな持っているから誰も気にならず、溶け込むことができるよね。もし大きいAIロボットが先を歩いて案内してたら、「なにしてるんだろう?」と気になるよね。スーツケースなら街中で自然に歩ける。実用化をするなら、スーツケースがいいということになったんだよ。
そしてなんといっても、スーツケースの中にコンピューターやバッテリーを詰め込めるから、装置がつくりやすいよね。
佐藤さん
気圧で階の違いを感知していると聞いたのですが、どうやって感知しているんでしょうか?
高木副館長
地球の大気圏には空気がずっと上まであるので、常にその分の重さがかかっているんだ。高さが上がると、圧力は低くなる。人間は1階から5階に上がっても気圧の違いは感じないけど、センサーで正確に、細かくとるとわかるんだよ。他の情報と気圧の情報を組み合わせて使うことで、AIスーツケースは縦にどれだけ移動したかがわかるんだ。今いる階によって使う地図も変わるから、絶対間違わないように正確に階も把握できるよ。
佐藤さん
iPhoneはどのような形で使用しているんですか?
高木副館長
iPhoneは視覚障害者の方が使いやすいように、画面読み上げ機能が搭載されているよ。画面に書かれていることなどを音声で読み上げてくれて、操作も簡単にできるんだ。視覚障害者の方が使い慣れているもので操作できるのが一番だと考えて、AIスーツケースに指示を出す部分はiPhoneを採用しているよ。
佐藤さんは、自分の「クールな白杖」のアイデアも伝えて、高木副館長からさまざまなヒントをもらっていました。佐藤さんの研究のお話は、8月10日の中間発表会、さらに12月の研究発表会で佐藤さん自身でプレゼンテーションをするから、そのときのお楽しみです!
文