三井化学の先端研究施設「VISION HUB™ SODEGAURA」ってどんなところ?《編集部取材レポート》

『子供の科学』2024年8月号で紹介している三井化学の未来技術創生センターがある「VISION HUB™ SODEGAURA」は、「こんなところで研究したい!」と思わせる素敵な研究施設! 研究者たちは、おしゃれな空間でコミュニケーションをとりつつ、奥に足を踏み込むと、超マニアックな研究空間(企業秘密なので写真はNG!)が広がっていました。どんなところか見ていきましょう!

「VISION HUB SODEGAURA」の外観。入口には大きな池がある。この建物の奥には広大な研究・実験施設が広がっている!

 この研究施設は、三井化学がまだ三井石油化学工業だった1987年に、新技術研究開発センターとしてつくられました。当時は100名ほどの研究員が働いていましたが、1997年に行われた三井東圧化学との合併により、三井化学が発足。全国に散らばっていた研究施設を袖ヶ浦に集約し、三井化学の研究開発拠点として発展してきました。そして2024年4月に、“三井化学の未来を創造していく原動力となる”ためのイノベーション創出の中核拠点として、「VISION HUB SODEGAURA」と改称されたのです。

 約30万平方メートル、東京ドーム6個分の広さの敷地に、3つの研究所と2つのセンター(そのうちの1つが未来技術創生センター)、さらには関連会社の研究施設があり、現在約1200名の研究員が働いています。

 石油化学を超える超石油化学、“超石化”を合言葉に進められている研究開発は多岐にわたります。例えば、3Dプリンターで歯をつくるための歯科材料、ノートパソコンやスマートフォンなどの情報機器に用いる電池材料、内部に細かな穴がたくさんあって柔らかい素材のウレタン材料などなど……普段私たちが使っている日用品の中にも、三井化学が開発した素材がたくさん使われています。

VISION HUB™ SODEGAURAのエントランスには“超石化”をイメージするテーブルが置かれ、その上には三井化学のさまざまな製品が展示されていて、三井化学の技術を実感できるように工夫されている。こうした展示や施設のデザインは、さまざまな部門の研究者が組織横断的に集まって、アイデアを出し合い研究所をよりよくしていく「超石化プロジェクト」によって考案、実現しているのだそう。

 これまでにない高機能の新材料を研究開発するとともに、その素材を実用化するための試験もVISION HUB SODEGAURAで行われています。新材料を分析、試験する施設も充実していて、関連会社の三井化学分析センターは国内最大規模を誇る化学製品の分析会社にもなっているそうです。開発した新素材を実用化するプロセスまで、VISION HUB SODEGAURAが担っているとは驚きでした!

エントランスで発見した、癒されるデザインのソファ。見た目だけでなく、注目はその素材だ。三井化学が研究開発に取り組んでいる、さまざまな硬さのウレタンでつくられており、それぞれ座り心地が違う。どの素材のソファがお好みか、違いを楽しむことができるようになっている。
展示されていた人体模型と記念撮影するツッティー……ん? この心臓の触り心地は結構リアル! 柔らかさを自在に制御できるプラスチックの利点を活かして、医師になるための手術のトレーニング用の心臓が開発されているのだそう。他にもさまざまな素材の特徴を利用して、医療用の器具がつくられている。

 VISION HUB SODEGAURAでは研究体制を充実させるだけでなく、働きやすい環境づくりも充実しています。おしゃれなカフェスペースや、靴を脱いでくつろげる和室があって、研究の合間にリフレッシュすることができます。

 もちろん休憩も大事ですが、リラックスした環境で、さまざまな専門分野を持つ研究者がコミュニケーションをとることで、新たなアイデアが生まれることもあります。研究者は研究室に閉じこもって実験している?なんて思っている読者もいるかもしれませんが、おしゃれな空間に集まって、楽しくアイデアを出し合いながら研究に取り組むのが、これからの研究者の姿といえるかもしれませんね。

VISION HUB SODEGAURAのエントランス周辺にいた研究員のみなさんに集まってもらいました。最前列には『子供の科学』の姉妹誌『天文ガイド』をお持ちの方も! 長年愛読している天文ファンだそう。

 さまざまな専門や趣味をもつ研究者が集まって、新素材の開発に挑む三井化学「VISION HUB SODEGAURA」。その中で未来を構想する「未来技術創生センター」の研究に参加したい小中学生は、ぜひ以下の「未来創りプロジェクト」特設サイトもチェックしましょう!

未来技術創生センター×子供の科学「未来創りプロジェクト」特設サイト
https://www.kodomonokagaku.com/mitsui_chemicals/

(撮影/青栁敏史)

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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