1924(大正13)年の創刊から100年間、科学への好奇心あふれる子供たちを応援し続けてきた雑誌『子供の科学』。誌面に載っている最先端の科学の話や、驚きの実験、おもしろい仕掛けの工作などにワクワクして育った読者から、ノーベル賞受賞者をはじめとした大発見をする研究者、画期的な発明をする開発者たちが生まれました。 そんな『子供の科学』を読んで育った読者へのインタビュー企画。子供時代のお話や、今の読者の子供たちへのメッセージなどをいただいています。
付録の紙飛行機に夢中だった
──『子供の科学』のどんな記事が好きでしたか?
小学生ぐらいのときに読んでいて、個々の記事は覚えていないのですが、工作の図面が載っていたりとか、電子工作系のものが載っていたりとか、実際につくるときの参考例がいっぱい載っていたのがおもしろかったですね。自分でつくってみるのが好きでした。
そして何より僕の中で印象深いのは、一番最後のところに付録で、二宮康明先生の紙工作「よく飛ぶ紙飛行機」というのが必ず1つついていたんですよ。ケント紙みたいな紙に印刷されたもので、これを切り抜いてつくるのが本当に楽しみで。
かっこいい飛行機だと切り抜くのがもったいなくて、つくれないみたいな感じだったんですけど、紙飛行機だけがまとまった「紙飛行機集」も出ていたので、それを買ったりもしました。100機以上つくったかなと思います。今でもすぐに取り出せる本棚の中にあって、もう色が褪せていますが、捨てられなくて持っています。紙飛行機を飛ばす基本はこの二宮先生の記事や付録で学んで、それをもとにいっぱいつくりましたね。
──今は文房具の企画開発や解説などいろいろなことをされていますが、そういった子供のころの科学の体験は今のお仕事に役立っていますか?
子供のころから、科学は、本で読む知識としてもすごく好きなのですが、それをつかって実際に何かものをつくるのもすごく好きで。それが今の、文房具をつくる側として企画開発をずっとやっていたりとか、文房具の機能などいろいろなものを解説するうえで、しくみを理解するのにすごく役立っています。
つくったり分解したり、それを考えたりすることが今でも、仕事にそのままなっているというか、むしろ、子供のころにそういう影響を受けたことが今ほとんどそのまま仕事になっているという感じですね。
(1988年7月号の『子供の科学』を手に取って)僕は文房具が好きで、過去のバックナンバーとか、わざわざい古いものを古本屋さんで探したりするんです。これは「文房具にも科学がいっぱい」と書いてあって、文房具の解説ページが載っています。昔はこういうことを教えようとしていたんだなというのがよくわかりますね。
──『子供の科学』100周年へのメッセージをいただけますか?
100周年ということで、僕も随分昔からのいろいろなバックナンバーを持っていたりもするのですが、戦前だったり戦後だったりのころ、子供たちがどんなふうに科学に憧れを抱いて、未来はこんなふうになるぞとイメージしていたのか……当時は、科学がこの先人類を素敵な未来に連れていってくれるという印象がすごくあったんですよね。こういう、昔の人たちが抱いていた科学に対する思いみたいなものも『子供の科学』から読み取れたりして、やっぱり100年続けるってすごいなって思います。
この雑誌を読んでいた子供たちがもう大人にもなってるし、なんならもうこの世にいないくらいの感じですけど、このとき、『子供の科学』を読んでいた人たちが今の日本の技術や科学をつくってきたのだと思うんですよね。子供のころにこれを読んで、俺もこんなものやりたいつくりたいとか、研究したいとか思った人たちが今の日本をつくっている。そう考えると、やっぱり100年『子供の科学』が続いていることをすごいなと思いますし、今の『子供の科学』を読んでいる子供たちが将来的には次の100年に向けて、いろいろなものづくりだったり、科学だったりを推し進めてくれると嬉しいなと僕は思います。
──本日は貴重なお話をいただきありがとうございました!
(動画撮影/川上秋レミイ、スチール/青栁敏史)
1924(大正13)年に創刊された小中学生向けの科学誌『子供の科学』は、2024年で100周年を迎えます。100周年イヤーとなる2024年には、子供向けの企画はもちろん、100年間のすべての読者と一緒に盛り上がれるコンテンツやイベント、『子供の科学』とともに歩んできたパートナー企業とコラボレーションした企画など、100周年を記念したさまざまなプロジェクトを企画しています。
『子供の科学』では100年の節目を迎えるにあたり、科学技術の発展に貢献し、未来をもっとおもしろくするために、好きなことを探究して、チャレンジする子供たちをサポートする「KIDS STARTUP PROJECT(キッズスタートアッププロジェクト)」を立ち上げます。そのメインプロジェクトとなるのが、「好き」をトコトン究める次世代教育プログラム「小中学生トコトンチャレンジ2024」です。
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