体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「細胞
」です。
細胞は体のどこにある?
あなたの「細胞」は体のどこにありますか? さわってみましょう。
実は、細胞は体のすべてといっていいくらい、ほとんどの場所にあります。
あなたの体の中には、何十兆個という膨大な数の細胞が含まれます。最新の研究では、成人の人間には37兆個の細胞が含まれていると見積もられています。
細胞の種類
細胞にはいろいろ種類があって、例えば、皮膚の細胞、目の細胞、歯の細胞、血の細胞、胃の細胞、肺の細胞、肝臓の細胞、腎臓の細胞、筋肉の細胞、神経細胞など、たくさんあります。なんでも、人間の体には約200種類もの細胞があるのだとか。
細胞のサイズはだいたい数十マイクロメートル。1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1だから、小さすぎてあなたの目で見ることはできません。ちなみに、腸内細菌などの細菌は数マイクロメートルだから細胞よりもっと小さい生き物です。
細胞の役割は?
細胞の大切な役割は「分裂」すること。1個の細胞が2個、2個の細胞が4個、4個の細胞が8個という具合にどんどん分裂して、体を成長したり維持したりします。
え? それだと、体がますます大きくなってやがて恐竜みたいにとんでもない大きさになるって? いいえ、そうはならないのです。なぜなら、細胞は分裂するものもあれば、古い細胞など死んでゆく細胞もあるから。つまり、分裂する細胞の数と死ぬ細胞の数がちょうどつりあっているから体格が維持できるわけです。分裂する(または死ぬ)細胞の数は1日に1兆個から10兆個っていわれています。すごくたくさんあるでしょ?
分裂する細胞としない細胞
体の中には、分裂する(できる)細胞と分裂しない(できない)細胞があります。皮膚の細胞やお腹の中の腸の細胞、血液の細胞は毎日たくさん分裂するけれど、筋肉の細胞や神経の細胞はほとんど分裂しません。だから、もし神経細胞が死んじゃうと、増える(分裂する)ことができないから、体はずっと神経細胞が死んだままの状態で一生を過ごさなくてはいけなくなります。なんとも不思議な細胞の性質ですね。
細胞の形と中身
細胞の形にもいろいろあって、星のような形もあれば、丸い、細長いなどの細胞もあって、細胞のいる場所にちょうどよい形をとっています。一方、細胞の中身の構造はといえば、ほぼどの細胞も共通しています。
細胞の中には1つの核があって、核の中には、DNAという遺伝情報がぎっしり詰まっています。DNAは「遺伝子」と呼ばれるあなたの体をつくるタンパク質を記した領域がたくさんあって、細胞が必要な遺伝子を引き出して目的のタンパク質をつくっています。
細胞の中には、核の他にもミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、中心体、リソソーム、リボソーム、細胞骨格などたくさんの「細胞内小器官」があります。細胞は自分で動いたり、エネルギーを生み出したり、分裂したり、必要なものをつくり出したり、他の細胞と連絡をとりあったりできるから、まるで細胞は1つの生命体のようにふるまいます。このような性質だから、細胞は「生命の最小単位」って呼ばれています。
細胞が生きていくためには
細胞は、自分が必要な栄養素や酸素は血管の中を流れる血液からもらっています。第24話「血(血液)と血管」でもありました。細胞はその必要な栄養分を血(血液)からもらって、細胞の中でエネルギーをつくって、そのエネルギーを使って生きているのです。
でも、エネルギーをつくると同時にゴミも出てしまう。例えば、二酸化炭素、水、老廃物などのゴミ。水もここではゴミ。これらが細胞の中に溜まってしまうといけないから、細胞は近くの毛細血管にポイっと捨てる。すると毛細血管内を流れる血液がゴミを回収してくれる。だから細胞はいつも栄養分が運ばれゴミを回収してもらえるというとても快適な環境にいるのですね。まさに“上げ膳据え膳”です!
細胞に栄養が運ばれなくなったら?
では、もし血液の流れが止まってしまったら? そう。細胞に栄養分が運ばれないし、ゴミも回収されなくなる。ということは、細胞はエネルギーをつくることができず、やがては死んでしまう。さっきお話したように、一度死ぬと二度ともとに戻らない細胞があるから、死ぬ細胞がたくさんあると体全体にもそのダメージが及んでしまうこともあります。
実は、ほんの一部でさえも血が止まることによって体全身に大きなダメージになる病気って意外にたくさんあって、中でも心筋梗塞や脳梗塞という病気は非常に怖い病気です。
死んだ細胞はこのあとどうなるの?
ところで、あなたの体の中で毎日死ぬたくさんの細胞は、死んだあとどう処理されると思いますか?
血の細胞の中に白血球ってあったよね? 白血球にはたくさんの種類があって、その中にある「マクロファージ」という細胞は死んだ細胞をきれいに食べてくれます。まるで“お掃除当番”。
その他、あなたはいつもきれいに体を洗っているはずだけど、毎日垢がでる。この垢は死んだ皮膚細胞が表面からはがれたものです。それから、ウンチ。ウンチの中にはたくさんの腸内細菌と、腸の表面にあった死んだ細胞がはがれたものが混じっています。だから、ウンチと一緒に死んだ細胞も流れて出ていくのですね。こうして死んだ細胞はきれいに処理されて、体には残らないようになっているのです。
まとめ
今回のお話をまとめると、細胞は体の中に何十兆個という膨大な数あって、とても小さく、いろいろな種類と形がある。分裂する細胞と分裂しない細胞がある。細胞の中には核という遺伝情報が集まる部分と、細胞内小器官がある。細胞は血液から栄養分と酸素をもらって、細胞の中で必要なエネルギーをつくって生きている。細胞の活動で出たゴミは血液に持って帰ってもらう。
いかがでしたか? 細胞はあなたの体の中の大切な一部? いや、すべてであることがわかりましたか?
大切にしましょうね、あなたの体の中の細胞。
文
(イラスト/齊藤恵)
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