体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「血(血液)と血管」です。
血はどこにある?
あなたの「血(血液)」は体のどこにありますか? さわってみましょう。
え? ケガもしてないのに血はさわれないって? その通り!
血は体の中を流れる赤い色の液体です。消防車、救急車、パトカーの回転灯(サイレン)、信号機などが赤色であるように、「赤」は一般に注意をあらわす色です。だから私たちは血を見ると、いち早く体のどこかかに何か異変が起こったのではないかと注意をします。
人間以外にも、多くの動物の血の色は赤い色をしています。ところが、赤色以外の血を持つ生き物もいます。例えば、イカやタコは青い色の血をもち、海の中に住むゴカイ、ケヤリムシ、ホヤは緑色の血をもちます。
血ってどのくらいあるの?
あなたの体の中にはどのくらいの血があるか知っていますか?
一般に、血の量は体重の約8%といわれます。体重が20㎏の人だと1.6L、30㎏の人だと2.4L、40㎏の人だと3.2Lですね。この計算方法を使って、一度あなたの体にどのくらい血があるのか計算してみましょう。
ケガをすると血がでる(出血)ことがあります。少しの出血ではまったく問題ありませんが、大けがなどで大量の出血がおこると大変です。なんでも血液全体の3分の1の量が急になくなると命にかかわると言われています。ケガや事故には注意したいものです。
血の成分について
それでは血ってどんな役割をしているのかをお話ししていきましょう。
血は「細胞成分」と「液体成分」という2つの大きな成分にわけることができます。細胞成分はさらに、①赤血球、②白血球、③血小板の3種類に分かれます。それぞれ説明していきましょう。
赤血球
あなたは血のにおいをかいだことがありますか?
あの独特なにおいは“鉄”のにおいです。赤血球の中にはヘモグロビンという赤い色の成分があって、その中に鉄が含まれているのであのようなにおいがするのです。ちなみに、血が赤く見えるのはヘモグロビンが赤いからです。
赤血球のいちばん大切な役割は、「酸素を体の中の細胞に運ぶこと」です。酸素はヘモグロビン中の鉄とつながることで遠くまで運ばれ、細胞の近くまでいくと鉄から離れ、細胞の中に入っていきます。赤血球は血の中でいちばんたくさん含まれている細胞だから、酸素を細胞に送り届けるという作業がいかに大切か
わかりますね。
ちなみに、酸素が離れたヘモグロビンをもつ赤血球は、体の中の肺(第11話「肺」参照)に行って再び酸素を受け取ります。ときに血の中に含まれるヘモグロビンが足りなくなって、体がフラフラすることがあります。これは「貧血」という症状で、顔やまぶたの裏側が白くなります。
白血球
白血球は「白」と書くけれど、実際の色は「白」ではなく、ほぼ透明です。赤血球は1種類しかないのに対して、白血球は好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などたくさんの種類があります。どの種類の白血球もあなたの体の中に侵入してきたばい菌、ウイルス、寄生虫などの外来生物をやっつけたり、あなたの体の中で発生した細胞の死骸など、いらなくなった物をきれいにお掃除したりします。あなたが病気にならないのはこの白血球のおかげです。
血小板
血小板は2番目に多い血液の細胞です。あなたがケガをして血が出たとき、その血はしばらくすると止まるよね? この「血を止める働き」をするのが血小板です。だから、もしも血小板がなかったら、あなたがケガをしたとき、ずっと血がとまらず出てしまう。これでは困りものですね。
第9話「腎臓と肝臓」のお話ででてきたフィブリノーゲンも同じく血を固める役割をもつものでした。つまり血小板とフィブリノーゲンのはたらきは同じですね。
以上が血の中の細胞の役割です。ちなみにこれら3種類の細胞がつくられる場所は、骨の中です。詳しくは第20話「骨」のお話で。
血液に含まれる液体成分の中身
では血の中のもう一つの成分である「液体」にはどんなものが含まれているのでしょう。
まず、血の中の液体って実は少し黄色い色をしていて、ちょっとだけねっとりしています。液体の中には、ブドウ糖や脂肪などのエネルギー源のほか、イオン、ミネラル、タンパク質など体にとって大切な栄養素、さらには細胞から吐き出された二酸化炭素や老廃物も入っています。
血はただ体の中にあるだけではなく、ずっと体内を流れています。心臓から出て、すべての細胞の近くを流れて、そして心臓に戻る。血はこれをずっとずっと繰り返しています。このことから、血は「血液」とよばれています。
そして、血液が流れる管のことを「血管」といいます。手の甲や手首のあたりをみると青紫色の血管があるのがわかりますか?
血液を流すための血管
血管は、大きく「動脈」、「静脈」、そして「毛細血管」の3種類があります。
動脈は、心臓から出る血液が通る血管です。動脈の中の血液は栄養や酸素をたっぷり含んでいます。あなたの首の横のあたりを触ってみると、「トクントクン」という動きを感じると思います。これは「脈拍」といって、心臓が血液を送り出したときの振動が動脈の壁に伝わって生じたものです。首の他にも、手首や顎の下、こめかみなど、動脈があるところは脈拍を触れることができます。このように、動く血管という意味をこめて「動脈」とよばれるのですね。
静脈は、心臓に戻る(帰る)血液が通る血管です。静脈の中の血液は細胞たちに栄養分や酸素を提供した後の血液だから、これらが少なくなっています。ちなみに静脈は、心臓に戻る血管だから心臓から受ける振動はなく、「トクントクン」は感じません。まったく動かない血管だから「静脈」とよばれているのですね。
最後に毛細血管。これは、とっても細い血管です。内臓や皮膚、筋肉の中にも血管があって血液が流れるのだけど、毛細血管は細胞一つひとつに栄養分などを届けるため、血管をできるだけ細くして各細胞の近くまでいけるような構造になっています。
血液と血管はこのように協力して、あなたの体の隅々まで、細胞が必要とする栄養分、酸素を送り届けつつ、細胞から出たゴミを回収しているのです。
動脈血と静脈血
これまで見てきたように、血液は全身の細胞に栄養分や酸素を運び、そしてゴミとなった老廃物を運び込む役割を行います。血液は、心臓から出て全身を巡り、すべての内臓や細胞たちに必要なものを送り届けます。その後、再び心臓に戻ってきますが、酸素が少ないままなので、今度は肺へ血液を送ります。肺は酸素がたくさんある臓器なので、ここで血液は酸素をもらいます。その血液は再び心臓にもどり、また心臓から出て全身に酸素や栄養素を運びます。
血液は酸素をたくさん含む動脈血と酸素が少ない静脈血となって、体中をいったりきたり、ずっとずっと循環しています。これを循環系と呼んでいます。
まとめ
いかがでしたか? 血と血管はあなたの体の中の大切な液体と場所だということがわかりましたか?
貧血にならないように、ヘモグロビンや赤血球をつくるもとになる栄養素、つまり鉄分やビタミン、タンパク質をしっかりとって、元気な血をつくりましょう。
大切にしましょうね、あなたの血と血管。
文
(イラスト/齊藤恵)
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