さまざまな分野で活躍する医師に、お仕事の内容や魅力を語ってもらう連載「ドクターズ・リレー」。子供の科学2022年10月号では、神経内科医の久手堅 司先生に取材。誌面で紹介しきれなかった「気象病」について、さらに詳しくお届けします。文末の「気象病チェックリスト」で、気象病の可能性を確認してみて。
ようやく認知され始めた気象病
── 最近、よく耳にするようになった「気象病」ですが、どうやったら治るのでしょうか?
気象病は、天気の変化によって頭痛や肩こり、めまいなどの不調が起こることをいいます。かつては「天気によって不調が起こる」といって病院に行っても、ほとんどが気のせいだとか、自律神経失調症だといわれて、相手にされませんでした。現在でも、気象病という名称は正式な病名にはなっておらず、ちゃんと診察できる医師は少ないと思います。
最近、テレビやネットなどでもだんだんと気象病という言葉を聞くようになりましたが、専門家が多くないので、正確な情報もなく、気象病は治らない、などと書かれていることがあります。
しかし、そんなことはありません。実際に私の医院に来る気象病の方の7割くらいは、不調が改善しています。気象病をゼロにすることは困難ですが、今つらいと思っている症状を軽くすることは難しくないと思っています。
というのも、気象病は、もともと体の不調があって、それに加えて天気の変化の影響を受けることで、もともとの不調がより増幅されて表れるものだからです。その「もともとの不調」の原因を取り除くことで、改善したり、症状が出ないようにできます。そのため、著書『気象病ハンドブック』では、後半部分に体のメンテナンスについても紹介しています。
また、よく「先生、治してください」と言われますが、私が治すわけではありません。患者さんの不調が治るように私が知っている事実をちゃんと伝えて、原因やしくみ、症状を説明し、患者さんが取り組めることを示しながら、一緒に治していくことを提案しています。
タブレットやスマホの見過ぎ、運動不足も原因に
──── 気象病になりやすい人はいますか?
気象病は、天気の変化だけが理由ではないので、もともと頭痛が出やすい人、低血圧の人、精神的に不安定な人などが天気の変化の影響を受けて、気象病となることが多いです。
そして、気象病の人の7~8割は女性です。女性には生理があって、その周期でホルモンバランスが変化するため、頭痛や腹痛、貧血など、毎月の不調が起こりやすいんです。そこに天気の変化が加わって、気象病になる人が多いのだと思います。
成長期のときは血圧が下がりやすいため、低血圧で朝起きられないなどの不調が出ることもありますし、受験のために部活や運動をやめたことで、急に頭痛が出るようになる人もいます。タブレットやスマホの見過ぎ、睡眠不足などが要因になることもあります。そういった場合は、運動やストレッチをしたり、スマホの使用時間を制限するなどして、少しずつ改善する方法を提案しています。
また一方で、子供が不調を訴えて来た場合、お母さんやお父さんも気象病であることが多く、気象病は遺伝しやすいのではないかと考えています。
気象病かも…と思ったらチェックしよう
次の➀~⑱のうち、あなたの症状に当てはまるものをチェックしてみよう。家族の方と一緒にやるのもおすすめ!
□➀天候が悪いときに体調が悪い。
□➁雨が降る前や天候が悪化する前に、なんとなく天気の変化が予測できる。
□③頭痛持ち(緊張型頭痛、片頭痛など)である。
□④首こり、肩こりがある。首肩の持病や不調がある。
□⑤めまいや耳鳴りが起こりやすい。
□⑥倦怠感が強い。起床時、日中も常にだるい。
□⑦低血圧気味である。血圧が低くなると体調不良が出る。
□⑧精神的な不調(不安障害、適応障害、抑うつ、統合失調症など)がある。
□⑨姿勢が悪い。猫背や反り腰がある。
□⑩古傷があり、時折痛みが出る。
□⑪原因不明の動悸や消化器の不調がある。
□⑫パソコンやスマホの使用時間が長い(平均4時間/日以上)。
□⑬乗り物酔いをすることが多い。
□⑭運動習慣がなく、ストレッチや柔軟体操をすることが少ない。
□⑮歯の食いしばりや歯ぎしり、歯科の治療歴が多い。
□⑯温度設定が一定の場所(夏は冷房、冬は暖房)にいることが多い。
□⑰日常的に、主にメンタル的なストレスを感じることが多い。
□⑱更年期障害ではないかと考えることがある。
(出典:『気象病ハンドブック』著/久手堅 司/誠文堂新光社)
●判定結果
1:➀と➁に該当する人は、高確率で気象病と考えていいでしょう。どちらか1つでも当てはまると、気象病の可能性は80%です。
2:➀➁以外の項目は、該当する数が多いほど気象病になるリスクが高まります。特に③~⑪は気象病の方が訴える典型的な症状です。また、③~⑱のうち、5項目以上に当てはまると、気象病の不調が起きやすいです。ただし、該当する項目が多い場合でも、必ず気象病というわけではありません。
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