体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「筋肉」です。
筋肉はどこにある?
あなたの「筋肉」は体のどこにありますか? さわってみましょう。
といいつつも、筋肉も骨と同じ、全身どこにでもありますね。力もちのあなたは、腕を曲げると上腕に立派な力こぶをつくることができますか?
筋肉ムキムキのことを「マッチョ」といいます。ぜひ、おうちの人やお友だちと立派な筋肉を見せあいっこしましょう。
筋肉は何個ある?
さて、人間の体の中には、大きな筋肉、小さな筋肉を含めて、なんと400個以上も筋肉があるといわれています。骨の数が約200個だから、筋肉の数は2倍ですね。また、すべての筋肉の重さは、体重の40%もあります。
ちなみに骨が体重の20%だから、骨と筋肉を合わせると、なんと体の60%を占めます。私たちの体の半分以上が骨と筋肉でできていることがわかりますね。
筋肉のはたらき
さて、こんなに体の中にたくさんある筋肉のはたらきといえば何でしょう? そうですね、運動、つまり体を動かすことがいちばん大切な役割です。
運動には、曲げる、伸ばす、開く、閉じる、ねじる、回転するなどいろいろな動き方があって、これらはみな筋肉の動きによって起こすことができます。ちなみに、動きがなくても、「支える」のように力を入れながらそのまま維持(保持)することも筋肉の役割の一つです。
体の運動といえば、「骨」の役割でもあります。骨は体を支えるために太く硬く丈夫なつくりになっています。しかし、骨自身が実際に動くわけではありません。動くのは筋肉です。つまり、筋肉が動くものであって骨は動かされるもの。もちろん筋肉だけあっても身体は動くことできませんから、骨という硬くて丈夫な“骨組み”に筋肉が張り付いて、骨と筋肉が協力して、体の運動を行います。
筋肉が動くとはどういうことか
それでは、「筋肉が動く」とはどういうことなのでしょうか。実は、複雑そうに見えて簡単。筋肉は、ただ「収縮する」、それだけを行います。収縮というのは、縮むことですね。びよーんと伸びた筋肉があれば、それが縮む。関節をまたいだ筋肉の両端に骨がついていると、筋肉の縮みによって骨どうしが近づく。こうして、例えば腕を曲げたり、伸ばしたり、ねじったりする動きができるのです。
では、筋肉の「収縮」はどのように起こるのでしょうか。実はこれはちょっとむずかしい。ここで小道具を使った説明をします。髪の毛をとく「くし」を思い出してください。くしを左手と右手に1本ずつ持った状態で、くしのとく側、つまり歯のある側どうしを併せていくと、くしの1本1本の歯が互いに相手の歯の間に入り込む。すると、2本のくしの距離が近づきます。
筋肉の細胞の中にもくしの歯のような線維がたくさんあって、線維どうしが互いの隙間に入り込むことで筋肉の長さが短くなる(収縮する)のです。 筋肉が収縮することで運動はもちろん、実は熱も発生します。筋肉が収縮するときには、ATPというエネルギーがつかわれますが、そのエネルギーはすべて収縮活動に使われるのではなく、一部は熱となって体を温めることに使われます。だから、運動をするということは、それと同時に体を温めることにもなるのです。
寒いとなぜふるえる?
冬のさむいとき、身体がぶるぶるとふるえるという経験があると思います。この「ふるえ」というのをよく考えれば、小刻みな筋肉の収縮運動とみることができます。
つまり、「ふるえ」というのは、筋肉を動かせて熱を生み出すための体の反応なのです。それで寒い状況でもなんとか体を冷やさずに温めようとする。体のみごとなはたらきと思いませんか?
筋肉が痛くなる
あなたはまた、別にこんな経験がありますか? とても長い距離を歩いたり、重いものを無理やりもったあと、しばらくすると筋肉がとても痛くなったっていう経験。働きものの筋肉だけど、ずっと動き続けるとさすがの筋肉も疲れます。これを「筋肉疲労」とか「筋肉痛」といいます。そういうときは、かるく筋肉をもみほぐして体をしっかり休ませましょう。きっと数日もすればよくなるでしょう。
筋肉の種類
実は、人間の体には合計3種類の筋肉があります。
一つは今まで習ってきた体の運動をおこす筋肉で、正しくは「骨格筋」です。焼肉屋さんのメニューに、ロース、ハラミ、バラ、カルビなどがあるけど、それらは全部骨格筋です。見た目は赤い色ですね。
二つ目は、心臓を構成する「心筋」という筋肉で、心臓のドクンドクンの拍動は、この心筋の収縮によって起こります。心筋は見た目、赤い色をしています。
三つ目は、主に内臓にある白っぽい色の筋肉、「平滑筋」です。たとえば、胃や腸が活発に動くのは平滑筋のはたらきによるものです。お腹に耳をあてると、お腹の中の音がよく聞こえます。「ゴロゴロ、グーグー」。これらは胃や腸が元気よく動いているために生じる音です。ちなみに平滑筋は、胃や腸以外にも、目、皮膚、血管、子宮など、さまざまなところにあります。
筋肉には自分の意志で動かせる筋肉と、動かせない筋肉があります。骨格筋は動かせる筋肉で、心筋と平滑筋は動かすことができません。あなたは胃袋や心臓を自分の意志で動かすことはできないでしょ? このように、自分の意志で動かせる筋肉とそうでない筋肉があるのは、実は神経の働き方のちがいで説明できます。詳しくは、「神経」のお話で。
まとめ
今日のお話をまとめると、筋肉は骨と協力して体の運動を行い、熱を発生させる。そして筋肉は骨格筋以外に心筋と平滑筋があって、主に内臓に含まれる。骨格筋は自分の意志で動かせる筋肉、心筋と平滑筋は自分の意志で動かせない筋肉のこと。
いかがでしたか? 「筋肉」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか?
年齢とともに筋肉は弱っていくから、幼い頃からしっかり筋肉を使って、マッチョを目指しましょう。 大切にしましょうね、あなたの「筋肉」。
文
(イラスト/齊藤恵)
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