体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「骨」です。
骨はどこにある?
あなたの「骨」は体のどこにありますか? さわってみましょう。
そう、骨は全身のいたるところにありますね。
骨はあなたの体の中心にあって、とても硬く、あなたの顔や胴体、手足の形を決めているから、まさに体の要です。
お魚やお肉を食べていると、ときどき骨が出てきます。細くて小さな骨や、太くて頑丈な骨までいろいろあります。骨は植物にはありません。生物の中では「脊椎動物」とよばれる仲間に骨が含まれます。
カルシウムをとろう!
骨の成長は体の成長と同じだから、子供はできるだけ骨の主な成分のカルシウムをたくさんとりましょう。カルシウムは、牛乳、チーズ、小魚、ひじき、モロヘイヤ、小松菜などに多く含まれています。特に牛乳やチーズは毎日欠かさずとりたい食べ物です。
人間の骨は何個ある?
あなたは、人間の骨は全部で何個あると思いますか? 子供と大人では少し違うのだけど、大人の骨はおよそ200個あります。たくさんあるでしょ? 骨の大きさ、形、長さは場所によってさまざまで、人間の体で一番大きい骨は、太ももにある「大腿骨」、一方、最も小さい骨は、ほんの数ミリしかない耳の中にある「耳小骨」です。
骨は何をしているの?
骨は、体を支えたり、内臓や脳を守ったり、体を動かすときなどに活躍するからとても丈夫につくられています。骨の表面には痛みを感じる神経細胞がたくさんあります。だから、骨にものがぶつかったり、運悪く骨を折ったりするとその人は痛くて痛くてたまらない。とくに足の小指や“弁慶の泣き所”(第19話「あし」参照)にものをぶつけると泣きたいほど痛いですね。
まだある骨の役割
実は、骨の役割ってこれだけではありません。
骨の表面は硬くて丈夫な材質なのだけど、骨の中心部分は実は空洞です。この空洞は「髄腔」といって、ここに「骨髄」と呼ばれる特別な成分が含まれます。骨髄というのは、「造血幹細胞」という血のすべての細胞、つまり赤血球、白血球、血小板を生み出すことができるすごい細胞がいる場所です。
だから骨のもう一つの大切な役割は、「血(血液)の細胞」をつくることなのです。
骨は変わらないようで変わっている
骨は、子供のときは太さや長さがどんどん成長して、硬くもなっていく。ところが、骨は大人になっても、長さや太さこそ変わらないけれど、骨の“成分”はダイナミックに変化しています。
どういうことかというと、骨はつねに作り替えられています。つまり、古い骨は壊され、また新しく骨が作られる、これをずっとずっと見えない小さなレベルで繰り返しています。どうしてこんな一見ムダなことをしているのでしょうか。
骨の中は、さっきもいったカルシウムがたくさん含まれます。そのカルシウムは骨そのものの材質なのだけど、実は私たちの細胞の栄養素でもあります。すると、細胞がカルシウムを欲しがっているとき、骨は骨自身を溶かしてでも細胞にカルシウムを送り届けてくれます。逆に細胞のカルシウムが充分足りているときは、余ったカルシウムが骨に戻されて新たな骨の材質として蓄えられるのね。
骨は必要なときに必要な分のカルシウムを細胞たちに届けてくれる、まさに“カルシウムの銀行”なのです。
骨折をしたことある?
さて、あなたは骨折をしたことありますか?
骨折というのは骨が折れることですね。たとえば、高い所から落っこちたり、ものにぶつかったり、車に引かれたり、自転車からこけたりすると、子供はまだ骨がそれほど丈夫ではないから、折れることがあります。でも、さっきいった骨の常に新しく作り替える能力のおかげで、きちんと病院で治療すれば元通りに治すことができます。
骨と骨のつなぎ目、関節について
さて、「手」のお話で、指を曲げるというお話がありました。ここではさらに、骨と骨のつなぎ目に注目しましょう。
骨は硬いから、体を動かすたびにつなぎ目にある骨と骨が擦れてしまう。骨の表面には痛みを感じる神経がたくさんあるから、骨が直接擦れると本来はものすごく痛いはず。そこで、骨と骨のつなぎ目で骨どうしが擦れるところは「関節」という特殊な構造になっています。
関節の向かいあう骨の表面は、軟骨という柔らかい骨になっています。軟骨は弾力があって滑らかだから、直接こすれあっても痛くないわけです。もし軟骨がなかったら、運動するたびに硬い骨と硬い骨が直接ぶつかり合ってしまう。最悪の場合、骨が割れてしまう。だから軟骨も体の大切な一部分です。
年を取ると…
人間は年をとると、だんだん骨が弱くなってきます。軟骨もすり減ってきます。これを骨粗鬆症というのだけど、なぜこんなことが起こるのか。
骨の成分であるカルシウムは、細胞にとっての大切な栄養素だから、骨は骨そのものを弱らせてでもカルシウムを細胞に届けます。残念ながら、年をとると運動量も減って、きちんとカルシウムを摂取していてもなかなか骨になりません。だから、高齢になると骨が弱くなってきて、骨折しやすくなります。骨折して立てなくなって、「寝たきり」という状態になることもあるのです。
おじいさん、おばあさんになってもそんな風になりたくない! そう思うのなら、あなたはできるだけ今のうちに骨を丈夫にしておくといいでしょう。しっかりカルシウムを摂って、運動を行う。すると、体は骨をたくさん作るようになるから、しっかりとした丈夫な骨が作られていきます。つまり、できるだけカルシウムの貯金をふやしておくことが大事ってことだね。
まとめ
今日のお話をまとめると、骨は私たちの体の中心にあって体を守ってくれたり、動かしたり、人間の体の形を作る。そしてカルシウムをため込み、必要に応じて細胞に送り届ける。さらに骨の中の空洞(髄腔)には血の細胞を作る造血幹細胞がいる場所、骨髄がある。骨と骨のつなぎ目は関節となって、軟骨によって骨との接触をやわらげる。
いかがでしたか? 「骨」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか? 大切にしましょうね、あなたの「骨」。
文
(イラスト/齊藤恵)
【連載バックナンバー】